唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

小路幸也さんの「花咲小路三丁目のナイト」を読む。

「花咲小路商店街」シリーズも4作目。

 

一作一作、登場人物が増え、

かなりの人数になるのは、

「東京バンドワゴン」シリーズと同じ。

 

悪意や冷笑、皮肉は一つもない。

その影もなく、

一点の曇りもない青空を見てるような気にさせてくれる。

 

良い子、良い大人ばかりで、

それを物足りなく思う人もあるだろうが、

爽やか、清々しい読後感は、

誰も文句はないだろう。

 

商店街に生きる普通の人々、とは言え、

中には、特殊な能力を持つ人物や

怪盗紳士などもいて、

そんじょそこらの商店街とは言い難い。

 

だが、暖かい気持ちにさせてくれる物語であることは

間違いない。

 

深夜営業の喫茶店「ナイト」に居候する望が

今回の主役。

 

ナイトは、人々の相談所になっている。

主は叔父の仁太。

世界各国を放浪した後で、

この商店街に戻り、店を開いた。

 

なかなか、個性的で、奥の深い人物である。

 

前作までの登場人物も混じり、

今夜も、問題を抱えた人が、ナイトの扉を開ける。

 

 

花咲小路三丁目のナイト

花咲小路三丁目のナイト

 

 

 

 

 

 

太田忠司さんの「万屋大悟のマシュマロな事件簿」を読む。

親バカな、警備会社の社長が主人公。

愛する娘を守るため、さまざまな事件に対峙する。

 

「鬼の万屋」と異名をとった、凄腕SPだった彼は、

ある出来事をきっかけに、退職。

民間警備会社を立ち上げる。

 

「金曜22時テレビドラマ化未決定!?」の

フレーズがウン(?)と目を引く。

 

俳優の遠藤憲一さんが本の装丁になっているため、

1行目を読み始めたときから、頭の中で「エンケン」さんが

汗をかきかき動き回る。

 

もう、そうなると、このキャラは、

エンケンさん以外、イメージできなくなる。

 

万屋の愛娘、知識(ちおり)は、市後市の

ご当地アイドルグループ「mashumaro15(マシュマロイチゴ)」の

リーダー。

 

マシュマロイチゴ(マシュイチ)に脅迫状が届き、

万屋がマシュイチの警備にあたる。

 

六つの章からなる連作モノ。

軽い文体で、抜群に読みやすい。

父娘の絆、グループ内の絆が、

事件の解決に従って、徐々に強くなる…。

 

 

万屋大悟のマシュマロな事件簿

万屋大悟のマシュマロな事件簿

 

 

 

 

 

 

翔田寛さんの「冤罪犯」を読む。

船橋署捜一巡査部長、香山を中心に、

三宅、増岡の刑事コンビ、

入江係長…。

 

刑事、一人一人が主人公、

そんな警察小説である。

 

曲者ぞろいだが、気合が入った刑事の物語は、

読み進めば進むほど、深く深く引き込まれていく。

 

警察のメンツよりも、上層部の思惑よりも、

警察官であるための信義、正義感を選ぶ刑事たち。

 

現場の熱が、じわじわと伝わってくる。

 

船橋市でブルーシートをかぶせられた

幼女の死体が発見される。

いたずらされ、絞殺されていた。

 

香山は、七年前に発生した連続少女殺害事件、

いわゆる「田宮事件」と酷似していることに

気づく。

 

犯人として逮捕された田宮龍司は、

拘留期限ギリギリで発見された証拠を

突きつけられ、自供してしまう。

 

だが、田宮はその後、無実を主張するが、

死刑の判決が下る。

そして、拘置所内で自殺してしまうのだ。

 

七年前の事件は冤罪だったのか、

船橋の幼女殺害は模倣犯の仕業なのか。

 

真実はどこにあるのか、

刑事たちの追求が始まる…。

 

 

冤罪犯 (角川書店単行本)

冤罪犯 (角川書店単行本)

 

 

 

 

大沢在昌さんの「夜明けまで眠らない」を読む。

元傭兵、今はタクシードライバー。

このギャップが、ああ、この作家さんのハードボイルドだ~と

ワクワクする。

 

戦場という非日常の世界と、

日本の都会という日常の世界。

 

二度とむこうには戻らないと思った男が

二つの世界の境界線を越えるとき、そこには

壮絶な覚悟がひしひしと感じられ、

心が痛くなる。

 

タクシー運転手の久我は、

かつて、民間軍事会社の傭兵として、

アフリカ小国、アンビアに派遣されていた。

 

そこで、危険極まりないゲリラに出会う。

彼らは、夜の闇に乗じて、敵の首を刈って

持ち帰るという一族だった。

 

朝、目覚めると、隣に寝ていたはずの

仲間の頭部が消えている、

そんなゲリラを相手にする恐怖で、

久我は夜、眠ることができない体になっていた。

 

ある日、久我は、久我の前歴を知っているような

そぶりを見せる客を乗せた。

 

その客は1台の携帯電話を車に忘れていく。

 

その日から、久我は、過去に帰らざるを得ない

事件に巻き込まれていく。

 

ヤクザ、ゲリラ、麻薬密輸業者が絡み合い、

大沢ハードボイルドは怒涛の勢いで

結末に向かう…。

 

 

夜明けまで眠らない

夜明けまで眠らない

 

 

 

 

 

 

 

香納諒一さんの「幸」を読む。

所轄、海坂署に誕生した、少々風変わりなコンビ。

 

中年刑事、寺沢の新しい相棒となったのは、

本店捜一から異動してきた一ノ瀬明子。

彼女は、シングルマザーにならんとする

妊娠八か月の妊婦だった。

 

これまでにない刑事コンビの誕生に、

期待感が膨らむ。

 

妊婦である女刑事とのコンビで、

何か、とんでもない犯人追跡が

見られるのかと思ったが、

謎を解き明かし、

コツコツと真実を追求していく姿は、

これまでの警察モノとそれほど

違いはなかった。

 

だが、そんなことはどうでもよくなるほど、

徐々に二人の息があってくる。

 

寺沢にも、一ノ瀬にも、

警察組織との軋轢という同じような過去があった。

 

刑事であることにこだわり、

どんな状況でも刑事であろうとする寺沢と、

寺沢の想いをくみ取ろうとする一ノ瀬。

 

妊婦であろうとなかろうと、

最強のコンビになることは間違いない。

 

寺沢と一ノ瀬は、認知症の老婆を保護する。

彼女がいたのは、開発計画で解体工事が決まっている

店の勝手口だった。

 

さらに、解体中の別の店舗跡地、から白骨遺体がみつかる。

その遺体は、三十年以上が経過しているという。

 

その店舗では、二十年前ごろから七年間住んでいた女が

三年前、昔の夫を殺害して捕まり、殺人犯として

服役していた。

 

そして、保護された老婆には虐待されている可能性があった。

 

バラバラな謎が少しずつ、少しずつ、集束していく。

 

 

幸SACHI

幸SACHI

 

 

 

 

 

 

 

曽根圭介さんの「TATSUMAKI 特命捜査対策室7係」を読む。

トンデモな女刑事と新米男性刑事コンビものは

かなり目にする。

 

女刑事が傍若無人に突っ走り、

めちゃめちゃにひっかきまわす。

 

その傍若無人ぶりの犠牲になるのは、

いつも、コンビを組まされる新米刑事だ。

 

この作品は、未解決事件を洗いなおす

特命対策室7係の活躍を描き出す。

 

ただ、特命対策室の刑事5人、

クセ者ぞろいだ。

 

トンデモ刑事の辰巳麻紀が事件をひっかきまわす中、

苦笑いしながらも、正面、あるいは陰から、

フォローしていく。

 

事件解決には辰巳ばかりが目立つのではなく、

おトボケの刑事たちのサポートが光る。

 

常に、辰巳にふりまわされる新米刑事で、

相方の鬼切刑事。

文句を言いながら、くらいついていくのは

打たれ強いタイプなのかもしれない。

 

 

辰巳と鬼切は、窃盗の容疑者から

5年前に起きた失踪事件をネタに量刑の取引を

持ちかけられる。

 

失踪したのは小林清二という男。

現職警察官の兄、亮一がその失踪に関わっていると

疑われた。

だが、結局、失踪との結びつきを示す証拠を

見つけられず、捜査は終了していた…。

 

 

TATSUMAKI 特命捜査対策室7係

TATSUMAKI 特命捜査対策室7係

 

 

 

 

 

 

 

香納諒一さんの「第四の闇」を読む。

男くさいハードボイルドとは、少々、雰囲気が異なる。

 

始まりから、主人公に心がそっていかない。

 

インターネット心中で妻を亡くした男が

酒におぼれたあげく、アル中になる。

 

それはそれで、うなずけるのだが、

結末まで、アルコールの中から、闇の中から

這い上がることもなく、底の底に沈んでいくような主人公に、

共感しがたい。

 

というより、その闇は、彼の中から湧き上がってくるのだと、

疑いを持ったときから、彼が抱え持つ傷に予想がつく。

 

哀しい結末ではある。

 

彼の中は空っぽで、その空っぽを、

闇が埋めてしまったということなのか。

 

 

妻の恭子をインターネット心中で失い、

酒におぼれるようになった新田。

 

そんな中、ネット心中を追っていた

友人のライター、小杉のバラバラ死体を

発見する。

 

その現場からは、胴体だけが消えていた。

 

さらに、ネット心中に関わっていたと

思われる人々も同じように殺害されていたことがわかる。

 

新田は、やはりネット心中で姉を亡くしたジローら、

若者たちと事件を追っていくのだが…。

 

 

第四の闇

第四の闇