唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

思い出を探す探偵とは…?鏑木蓮さんの「ねじれた過去 京都思い出探偵ファイル」を読む。

 

ねじれた過去 京都思い出探偵ファイル (PHP文芸文庫)

ねじれた過去 京都思い出探偵ファイル (PHP文芸文庫)

  • 作者:鏑木 蓮
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/07/17
  • メディア: 文庫
 

 

 

思い出探しがテーマの、「思い出探偵」シリーズ二作目。

連作短編モノ。

 

また、やってしまった。

一作目を飛び越え、二作目から読んでしまった…。

 

探偵社のメンバーの関係性や、

それぞれの背景を読んでからのほうが、

すんなり溶け込めたかもしれないのに。

 

ま、それはそれとして。

 

人の思い出を探す探偵という設定は、なかなか興味深い。

 

元京都府警刑事の所長、実相を中心に、元看護士の

一ノ瀬由美、両親を惨殺された過去を持つ、橘佳菜子に

新メンバーを加えた第二弾。

 

遊園地に残されたカメラ、時代劇の斬られ役一筋の男の失踪、

カフェで倒れた記憶喪失の男、それぞれの編で、

メンバー一人ひとりが軸となり、物語が進んでいく。

 

思い出というものは、記憶とはまた異なるニュアンスで

語られる。

「楽しい」「悲しい」「辛い」…、さまざまな形容詞が

つけられるが、「思い出」という言葉には、

人が大切にしている何か、そんな意味が感じられる。

 

悲しい記憶、苦しい記憶であろうと、「思い出」と言ってしまうと、

郷愁めいたものを感じてしまう。

 

物語はすべてに、温かい人と人との関わりが描かれている。

それは、実相が語った、

「探偵社のみんなは、自分を励まし続けるために、

人を励ましているんだ」という言葉に集約されている。

 

 

 

警察を退職したオジサン探偵団と、新米オンナ刑事「ひよっこ」の絡みがますます楽しい…。加藤実秋さんの「メゾンド・ポリス」②、③を読む。

 

メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視 (角川文庫)

メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視 (角川文庫)

  • 作者:加藤 実秋
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/10/24
  • メディア: 文庫
 

 

 

メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト (角川文庫)

メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト (角川文庫)

  • 作者:加藤 実秋
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/02/23
  • メディア: 文庫
 

 

「メゾン・ド・ポリス」シリーズの二作、三作目を

一挙に読んだ。

 

これぞ、ザ・エンタメだ。

 

少年探偵団、ならぬ、オッサン探偵団。

副総監、鑑識課員、刑事、ま、すべて元がつくのだが。

退職した彼らがシェアハウスに同居して、って…。

 

さらに、所轄の新米オンナ刑事、ひよりと一緒に捜査、なんて…。

 

もう、最初っから、読んで楽しい警察モノってことが

丸わかりだ。

 

降圧剤を飲みながら、薄味の食事に気を使い、

それでも、昔取った杵柄で、いやいや彼らは今でも、

心は現役である。

 

このオジサンたち、なんだかんだ言いながら、

「ひよっこ」こと、ひよりを愛しんでいる。

 

ワタシも、このオジサンたちと同じような年齢になって、

こんな仲間たちと一緒に暮らし、

生き生きとした生活ができる彼らが、何だか羨ましくなってくる。

 

とにかく、ちょっと、じ~んときたり、

クスっとしたり、理屈なく楽しめるエンタメストーリーである。

 

 

 

 

 

ネットフリマで夢が売られているとしたら…。夢探偵シリーズ、三作目。内藤了さんの「夢探偵フロイト 邪神が売る殺意」を読む。

 

夢探偵フロイト: 邪神が売る殺意 (小学館文庫キャラブン!)

夢探偵フロイト: 邪神が売る殺意 (小学館文庫キャラブン!)

  • 作者:内藤 了
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: 文庫
 

 

 

「夢探偵フロイト」シリーズの三作目。

 

フロイト、ペコ、ヲタ森のチームにも、そろそろ

変化が現れるのだろうか。

 

就活に苦戦していたペコが、ついに就職へ…。

 

この作家さんの作品では、女性が主人公のシリーズは多い。

結構、みんな、鼻っ柱が強くって、肝が据わっていて、

でも、愛すべきキャラだ。

 

その中で、このシリーズのペコだけは、

どうも、フニャフニャとしている。

 

学生生活をぼーっと送り、単位を落としそうになって焦り、

就活も崖っぷちギリギリで始め、

自分が何をやりたいか、何にむいているのか、

卒業を目前にしても分かっていない…。

ま、等身大の女子大生が描かれているといえばそうなのだが。

 

このシリーズでは、見るべきところは、

三人のチームとしての魅力なのだろうから、

ペコがフニャフニャでも、別にいいか。

 

ネットフリマで夢が売られているという情報が入る。

興味をひかれた三人は、フロイトが凶夢を、

ペコが吉夢を買ってみる。

 

だが、ペコに間違って届いたのは凶夢の方だった。

 

その夜、彼女が見た夢は…。

 

 

「湿原に沈んだ者は、永遠に水の中を彷徨うという…」、桜木紫乃さんの「凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂」を読む。

「北海道警釧路方面本部シリーズ」と言ってもいいだろうか。

 

二作目の「氷の轍」を先に読んでしまったのだが、

二作目で大門真由の相棒となった片桐の、刑事としての過去が

「凍原」で把握できた。

 

片桐と、そして因縁のある松崎比呂、二人のコンビが

札幌からやって来て釧路で殺された若者の痕跡をたどっていく。

それは、このコンビの過去をたどる道でもあった。

 

重々しく、暗い作品だ。

 

さまざまな女たちの、一筋縄ではいかない人生が描かれ、

交錯し、そして、バラバラになっていく。

 

これは、「氷の轍」でも感じたことだ。

 

戦後の、樺太からの引き揚げ者が辿る

過酷な運命。

 

だからといって、罪を犯していいわけではない。

ましてや、どうして子どもが、

過去の清算をしなければならないのか。

 

「氷の轍」にもあったが、

被害者は、殺される理由があって殺された。

加害者は、殺す理由があって殺した…、という。

 

だが、被害者は本当に、殺されるべくして殺されたのだろうか。

犯人は、殺すべくして殺したのだろうか。

 

この結末は、誰も悪くない、

いや、誰もが悪いんじゃないかと、

どちらの方向にも向かわされ、

至極、あいまいな気持ちになってしまう。

 

 

 

あの名作「アブデカ」の二人もビックリの…、最凶コンビの登場。大沢在昌さんの「らんぼう」を読む。

 

らんぼう 新装版 (角川文庫)

らんぼう 新装版 (角川文庫)

  • 作者:大沢 在昌
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫
 

 

 

まあ、何の説明も、理屈もいらない。

ただ、楽しんで、面白かったぁ~、とページを閉じるだけでいい。

 

かなり前に読んだものだが、

今回再読。何度読んでも面白い。

 

巨漢の刑事、ウラこと大浦と、小柄だが空手の達人、

イケこと赤池のコンビが、ヤクザや犯罪者を完膚なきまでに

叩きのめす、痛快刑事モノ。

十一編の連作短編が収められている。

 

もう、それ以上でも以下でもない、ってところが楽しい。

 

二人ともがキレやすく、とんでもなく強いときてる。

もう、向かう所敵なし、なのだ。

 

もちろん、ヤクザからも、そして署員からも恐れられているところもいい。

 

どうしようもなさがプンプンにおってくるが、

この二人、決して「クズ」ではない。

 

どちらも憎めない性格で、愛されキャラだって言っても

いいかもしれない。

 

大立ち回りした後に、誰かが救われていることだってある。

 

まだまだ、この二人に会いたいのだが、続編はないのでしょうか。

 

 

相変わらず、異端だわぁ~、榎本憲男さんの「巡査長 真行寺弘道 エージェント」を読む。

  

エージェント-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

エージェント-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

  • 作者:榎本 憲男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/11/21
  • メディア: 文庫
 

 

 

「巡査長 真行寺弘道」シリーズの四作目。

 

異端の刑事の捜査は、やはり異端である。

何らかの情報を掴むと、それをきっかけに想像を次々に膨らませ、

「そう考えると面白い」と言いながら、真相に迫っていく。

 

彼の頭の中だけで完結していくもので、

警察常道の、「ニコイチ」にのっとって動くなら、

組まされた相手はかなわないだろうなぁ。

 

どの作品もテーマは大きく、時として迷子になりそうなのだが、

文体の力強さで、ぐいぐい引っ張られていく。

 

今回も、政権、選挙、AIペットロボット、仮想通貨、

個人情報収集、さらには中国スパイまで出てきて、

大盤振る舞いである。

 

政治や経済の、真行寺なりのとらえ方、理解の仕方が

興味深い。

 

それは何といっても、この異端の刑事の

溢れんばかりの魅力からくるものだ。

 

お尋ね者のハッカーと手を組んだ違法捜査も辞さない、

ということもそうだが、

巡査長に甘んじ、というより、自らその立場を選び、

何ものにも縛られない、自由人であるということ。

それは、警察組織にあっては、奇跡のような存在だ。

 

そして、彼の相棒となるハッカーの「黒木」との絆、

居候の森園やサランとの関係性も、なんか、熱いものがある。

 

たまには、王道の殺人事件かなんかを扱ってみて欲しいが、

自由人の巡査長が相手する悪は、やっぱり巨悪なほうがいいのかもしれない。

ま、今回の相手が巨悪だったかどうかは…。

 

 

神木は本物の「怪物」になったのか…。二上剛さんの「黒薔薇 刑事課強行犯係・神木恭子」を読む。

 

黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子 (講談社文庫)

黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子 (講談社文庫)

  • 作者:二上 剛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

 

一人の若き、新米オンナ刑事、神木恭子が

「怪物に育つ」までを描いた、いわば、

成長ストーリーか。

 

読み終えてみれば、人の欲望に振り回されただけの、

なにか、ネバっこい、ドロドロとしたものの中に、

足を突っ込んだような気がする。

 

ストーリー展開はスリリングで、スピーディーで、

引き込まれ、引きずりまわされたが、

神木の仲間となる、折原や係長が、少々、マヌケに見えてくる。

 

神木自身が、悪を追い詰めるやり方に心底は納得していない、

そんな感じを受けた。

正義を振りかざせ、というわけではないが、

「怪物」になるなら、徹底してなってほしい。

自らに言い聞かせるようなところが、少々気になる。

 

それに、結局のところ、悪を追い詰めきれていないし…。