樋口有介さんの「枯葉色グッドバイ」を読む。
「アルバイトをしませんか?」。一家惨殺事件の捜査が行き詰まる中、所轄署刑事の吹石夕子はあるホームレスを日当二千円で助手に雇う。女刑事とホームレス、この異色コンビが憂鬱な捜査の中、真相に近づいていく。
羽田のマンションで家族三人が惨殺された事件では、
たまたま友人宅に出かけていた高校生の長女、
美亜が生き残っていた。
事件から半年ほどたって、美亜の友人の絞殺死体が
代々木公園傍で発見される。
羽田事件との関連を探るべく代々木公園に出かけた吹石は、
一人のホームレスを見かける。
そのホームレスは、かつて警察学校時代の逮捕術教官、椎葉だった。
椎葉は警視庁捜査一課の優秀な刑事だったが、
自らの過失から娘を亡くし、すべてを失っていた。
一家惨殺の生き残り、近親相姦、レイプ殺人と、
重たい出来事の間をゆらゆらと漂いながら、
この異色コンビは真相に近づいていく。
ため息をつきたくなるような
重苦しい事実が明らかになって行くのだが、
ページをくる手を止めさせないのは、
洒脱な語り口とシニカルな
ユーモアがにじみ出る文体のせいか。
樋口ハードボイルドが泥臭くなくオシャレなのは、
この軽妙な文体でテンポよくワタシたちを結末まで
連れて行ってくれるからだろう。
面白さは減速することなく続くが、
最後に切なさが残る物語である。