日明恩さんの「ギフト」を読む。
レンタルビデオ店の店員、須賀原は、
ある棚の前に立ち一点を見つめる少年に目を留める。
彼は毎日のように来ては、棚に置かれたDVD、
映画「シックスセンス」を見つめ、そして、
静かに涙を流していた。
須賀原はある日、街でその少年をみかける。
彼は、横断歩道の信号待ちをしていたが、
突然、何かから逃げるように道路へ飛び出す。
思わず少年の腕をつかんで引き戻した須賀原が
見たものは…。
顔と体の左側が砕け、血を流す老女が目の前に現れる。
それは、普通の人間にはありえない死者の姿だった。
その少年には死者が見えるのではないか、そして彼に触れた自分にも。
その日から須賀原は、ある目的をもって彼に近づいていく。
須賀原は警察官であったが、刑事時代、
自転車泥棒をしようとしていた少年を追いかけ、
事故死させてしまうという過去があった。
それ以来、苦しみの中だけで生きてきた。
彼に会い、あやまりたい…。
死者の見える少年と出会い、
現世にとどまる死者たちの抱える問題を解き明かし、
そして、見送るまでの6つのストーリー。
突然命を奪われてしまった死者、自ら命を絶った死者。
それぞれが思いを残して、この世を漂い続ける。
死に至っても苦しみから逃れることはできない人間とは、
なんと、業の深いものなのか。
だが、痛みや重さだけではない。
死者が見えることで苦しみを抱える少年と、
人の命を奪ってしまったことに苦しむ須賀原の
再生の物語でもある。