中山七里さんの「ネメシスの使者」を読む。
クセ者、渡瀬警部、そして岬検事が登場する。
これまで、さまざまな社会問題をテーマに扱ってきた
作家さんの作品で、今回は死刑制度。
死刑を逃れた凶悪犯の家族が惨殺される。
殺害方法は、その凶悪犯がかつて起こした事件を
踏襲したものだった。
現場には「ネメシス」というメッセージが
残されている。
「ネメシス」とは「義憤」を意味するが、
「復讐」と解される場合もある。
復讐なら、過去の事件の関係者による「報復」なのか。
それとも、司法制度に対するテロなのか。
渡瀬と古手川、岬が、犯人、そしてその真意を追いかける。
渡瀬シリーズを読むたびに思う。
彼は、実にブレない。
そのブレなさが、安定感を引き出し、
どんな状況になろうと、安心して読み進めていける。
渡瀬警部に任せていれば、間違いない、と。
事件に巻き込まれなければ、その渦中の人の想いは
分からない。
加害者と被害者家族。
「目には目を、歯に歯を」。
それで、納得というものは得られるのか。
それで、けじめをつけるしかないのか。
それ以上の落としどころはないのか。
どう考えても、答えは出ない。