唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

浅暮三文さんの「百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001」を読む。

亜坂誠はK署の若手刑事。

離婚後、四歳の娘を引き取りながら、

仕事を続けている。

 

不規則な勤務で娘との時間を持てないことに悩み、

仕事に身が入らない。

 

そうした雰囲気が仲間にも伝わるのか、

いい加減な仕事をすると思われ、

亜坂とは誰も組みたがらなくなり、浮いた存在になっていった。

 

そんなとき、管内で五歳の少女の誘拐事件が発生する。

 

新聞社に届いた犯人からの要求は、

少女の家族が経営する化学企業が起こした水質汚染の告発。

汚染の隠蔽された真実を報道しろというものだった。

そして、「百匹の踊る猫は告げていた」という文章が

合言葉として添えてあった。

 

「百匹の踊る猫」とは一体何を示すのか。

 

亜坂は捜査一課からやってきた刑事、土橋と組む。

土橋は、独特の思考と捜査を行う男だった。

 

引っ張りまわされ、その間の土橋からの問いかけを

始めはいい加減に流していた亜坂だが、

思考し、構築した土橋の推理がことごとく事実と重なっていくのを

目の当たりにするうち、亜坂の中で刑事の魂が目を覚ましていく。

 

土橋の言う、事件の作用と反作用は、いまひとつピンと来ないが、

地道に事実を集め、積み上げ、犯人に肉薄していく様、

そして、その影響を受け、亜坂が刑事の顔になっていく様子は、

迫力がある。

 

「亜坂」シリーズも、そしてこの作家さんの「セブン」シリーズも、

どちらも土橋が登場するのだが、

どうしても土橋に目が行ってしまう。

土橋なくしては、どちらも「塩の抜けた」薄ぼんやりとした

味になってしまうのではないかと、思う。

 

百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001 (集英社文庫)

百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001 (集英社文庫)