浅暮三文さんの「誘拐犯はカラスが知っている 天才動物行動学者白井旗男」を読む。
誘拐犯はカラスが知っている―天才動物行動学者 白井旗男―(新潮文庫)
- 作者: 浅暮三文
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/08/31
- メディア: Kindle版
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面白さが後からジワジワとやってくるタイプ、
なのかもしれない。
少々偏屈だが、頭脳明晰、洞察力に優れた動物学者が、
動物の行動に関する知識を駆使して、さまざまな事件の謎を解く、
七編の連作モノ。
白井は、両親が旅行中、消息不明となってしまったことから、
引きこもり状態になった。
そんな白井を、大学時代の後輩で、
現在は警察犬のハンドラーである原友美が外へ引っ張り出そうと、
事件の謎解きを頼む。
カラスの行動から、誘拐された人質を発見する「Case 1 烏合の地」から、
鳩の審美眼が、盗まれた絵画の行方を突き止める「Case 2 翼と絵画」、
リスの生態からバラバラ殺人事件の犯人に行きつく
「Case 3 チャップリンの新しい靴」など、さまざまな動物の生態が
オマケの知識として楽しめる。
特に、「翼と絵画」では、鳩や文鳥は絵の区別がつき、
その巧拙も見分けるほどの認知力を持つという話は興味深い。
白井の推理で事件が解決されるにつれ、
友美、鑑識課の岸本、そして白井の能力を認める
捜査一課の刑事、土橋というチームが出来上がっていく。
そして、最後のエピソードでは、行方不明になった両親の謎が
解き明かされる。
シリーズ化された小説を読み続けたいと思うのは、
まず、登場人物に惚れこんだときだ。
紙の上で、泣き、笑い、失敗し、行き詰まり、悩み、
それでも立ち止まらず結末にたどり着く。
その一挙手一投足に、ワタシたちは感情移入し、
一緒にワクワクしたり、時にはじわーっと涙を滲ませたりもする。
そうなって、新刊を待ち焦がれるのだ。
この作品に関しては、残念ながら、
そこまで心を持っていかれなかった…。