唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

浅暮三文さんの「誘拐犯はカラスが知っている 天才動物行動学者白井旗男」を読む。

 

誘拐犯はカラスが知っている―天才動物行動学者 白井旗男―(新潮文庫)

誘拐犯はカラスが知っている―天才動物行動学者 白井旗男―(新潮文庫)

 

 

 

面白さが後からジワジワとやってくるタイプ、

なのかもしれない。

 

 少々偏屈だが、頭脳明晰、洞察力に優れた動物学者が、

動物の行動に関する知識を駆使して、さまざまな事件の謎を解く、

七編の連作モノ。

 

 

白井は、両親が旅行中、消息不明となってしまったことから、

引きこもり状態になった。

そんな白井を、大学時代の後輩で、

現在は警察犬のハンドラーである原友美が外へ引っ張り出そうと、

事件の謎解きを頼む。

 

カラスの行動から、誘拐された人質を発見する「Case 1 烏合の地」から、

鳩の審美眼が、盗まれた絵画の行方を突き止める「Case 2 翼と絵画」、

リスの生態からバラバラ殺人事件の犯人に行きつく

「Case 3  チャップリンの新しい靴」など、さまざまな動物の生態が

オマケの知識として楽しめる。

 

特に、「翼と絵画」では、鳩や文鳥は絵の区別がつき、

その巧拙も見分けるほどの認知力を持つという話は興味深い。

 

白井の推理で事件が解決されるにつれ、

友美、鑑識課の岸本、そして白井の能力を認める

捜査一課の刑事、土橋というチームが出来上がっていく。

 

そして、最後のエピソードでは、行方不明になった両親の謎が

解き明かされる。

 

シリーズ化された小説を読み続けたいと思うのは、

まず、登場人物に惚れこんだときだ。

 

紙の上で、泣き、笑い、失敗し、行き詰まり、悩み、

それでも立ち止まらず結末にたどり着く。

 

その一挙手一投足に、ワタシたちは感情移入し、

一緒にワクワクしたり、時にはじわーっと涙を滲ませたりもする。

そうなって、新刊を待ち焦がれるのだ。

 

この作品に関しては、残念ながら、

そこまで心を持っていかれなかった…。