長江俊和さんの「出版禁止」を読む。
謎を解くミステリーというより、真相は、読者一人一人の心の中にある、
というか、読み方によって到達するところが違うような物語は、あまり好みではない。
そして、最後の一行、ここに真実があるのか、ないのか。
ともかく、さまざまな箇所にひっかけがあったり、
なぞ解きのヒントがあったりと、
すら~っと読めないところも、好みではない。
深読みをしないと分からなくなるし、深読みしすぎても
迷子になってしまう。
これも、やっぱり好みではない。
でも、やはり、むさぼるように、読んでしまった、いや、読まされてしまった。
謎は謎として、やはり、これは男女の究極の愛の物語にしておきたい。
「殺したいほど狂おしい」か、「死にたいほど愛おしい」か、
いずれにしても、男女の愛ほど、厄介なものはないということか。
長江が手に入れたのは、総合月刊誌に連載される予定だったが、
掲載が見送られたルポルタージュ。
それは、著名なドキュメンタリー作家、熊切敏が秘書の女性と心中し、
そして、女性だけが生き残った事件を追ったものだった。
ルポルタージュ「カミュの刺客」の著者、若橋呉成は、
その心中事件が仕組まれたものという疑いを持ち、
生き残りの女性にインタビューを試みるのだが…。