唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

小路幸也さんの「アンド・アイ・ラブ・ハー」を読む。

 

アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン (集英社文芸単行本)

アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン (集英社文芸単行本)

 

 

 

 

「東京バンドワゴン」シリーズも14作目だとか。

 

このシリーズを読んでいると、

ワタシらの世代が育った、「向こう三軒両隣」的なものが

鮮やかに思い出され、昭和の真っただ中にいるような

気にさせてくれる。

 

自分の原風景を見るようで、涙がにじんでくるのだ。

 

今、現代社会では、ご近所の交流といったら、

トラブルしか思い描けないから余計だ。

 

ご近所の付き合いを、誰もが面倒がらずに、

楽しんでいる。

助け、助けられ、これはもう、

今としては、理想としか言いようがない。

 

なかなか手に入らないもの、だからこそ、

人の心を掴むのだろう。

 

この堀田家の雰囲気は、決して変わることなく、

そこにあり続ける。

 

裏堀田家の姿など、思いようがない。

 

悪意の陰すら見えない。

 

だからこそ安心して、

読み進めることができる。

そんな、安心感がシリーズを支えている。

 

哀しく、心がささくれ立つような展開を

誰も望まない。

 

ぬるいと言われようと、

日の光が差し込む結末を求めるのだ。

 

 

f:id:ohoba3:20190613140836j:plain

 

 

今作は、「秋」から始まって「夏」まで、

四季の副題がついた、4つの物語。

 

家族が大切にしている人との永遠の別れや、

思いがけない決心など、相変わらず、様々な出来事が

起こるが、収まる所に、収まるべくして、収まっていく。