香納諒一さんの「新宿花園裏交番 坂下巡査」を読む。
新宿花園神社の裏にある交番、通称「花園裏交番」に勤務する
坂下巡査、二十七歳の四季が描かれる。
場所が場所だけに、事件のネタはそこかしこに
転がっているように見える。
だが、刑事ではない、交番勤務の警官が、
どう、事件に関わっていくのか。
新宿の交番という舞台は決して悪くはないのだが、
少々、中途半端感があるような。
ただ、登場人物は誰もが魅力的ではある。
特に、ビッグ・ママと恐れられる、新宿署捜査一課の警部補、
深町しのぶ。そして、ヤクザとなって、坂下の前に姿を現した、
高校時代の野球部の監督、西沖。
この二人の人間像ははっきりしており、すっと、
心に入ってくる。
それに比べ、坂下は、輪郭がどことなくぼんやりしている。
主人公とはいえ、どこまでも傍観者のような気がする。
その立場が、読者であるワタシたちも、物語に入り込み、
主人公の傍らでその息遣いを感じられず、単なる
傍観者のままで終わってしまう理由なのか。
坂下は、警官になる前、サラリーマンだったというが、
警官になった理由も、西沖がヤクザにまで身を持ち崩した理由も、
明かされていない。
次があるということか…。