囲碁のシロートでも、楽しめます…。水原秀策さんの「黒と白の殺意」を読む。
文章に、少しばかりのユーモアが感じられる。
といっても、決して、軽いユーモアミステリーではない。
ユーモアというより、人間味といったほうが、あってるかも。
そのため、考えれば、事件の動機が陰惨なのだが、
ドロっとしたものを感ぜずにすむ。
先日読んだ、「盤上の向日葵」では、将棋の世界を垣間見た。
そして今度は、囲碁である。
「盤上の向日葵」の場合と同様、ワタシ自身、囲碁の知識は全くなく、
知識があるほうが、数倍楽しめるかと危ぶんだが、
無くても十分楽しめた。
後半、師弟対決の場面の緊張感、緊迫感は
シロウトのワタシにも伝わって、喉が渇くほど。
「コスミツケ」だの、「ノゾキ」だの、「ビラキ」だの、
「シノギ」だの、チンプンカンプンなのだが、
それも気にならないほど、そのリズムが楽しかった。
主人公は、「殺し屋」と異名をとる、プロ囲碁棋士の椎名弓彦。
試合が行われたホテルで、囲碁協会理事の殺害された死体を発見する。
捜査が進むうち、大村と口論しているところを目撃されていた
椎名の弟、直人が容疑者として浮上し逮捕されてしまう。
直人の無実を信じる弓彦は、直人の雇い主、桐山千穂と協力して
真犯人探しをするのだが…。
ストーリー展開も、登場人物も魅力的で、
十分堪能できた。特に、ワタシの中では桐山がなかなかで、
彼女との関係をもう少し見ていたかった。