サラッとした味わい、それがクセになる…。内山純さんの「ビリヤード・ハナブサへようこそ」を読む。
サラッと読める。
「サラッと」ということは、
手に汗握るシーンや、犯人を追い詰めるドキドキ感というものが、
足りないということにもなりそうだが、
ここの「サラッと」は、決して悪い意味ではない。
連作短編の中には、これまで使い古されたトリックもあるが、
「名探偵」の活躍ばかりでなく、
登場人物のチームワークや連係プレーがしっかりと描かれ、
それが安心感につながっていく。
いわゆる安楽椅子探偵モノか。
謎解きの中心人物は、「ビリヤード・ハナブサ」のアルバイト店員で、
大学院生の中 央(アタリ アキラ)。
(元世界チャンピオンで、ビリヤード・ハナブサのオーナーである
英雄一郎が名探偵役を務めるのかと思ったが)
そして、彼をサポートする仲間たちは、
アタリの「オトモダチ君」の日下、「ご隠居」の佐藤、
珈琲専門店オーナーの小西、ナゾノ女性、木戸の姉さん。
事件に巻き込まれた客や関係者が持ち込んでくる、仲間たちが
集めてくる情報を基に、毎度、名探偵役のアタリが、
頭の中で推理を組み立てていく。
常連客にしろ、アタリにしろ、決して濃いキャラではなく、
むしろ、あっさりとしているのだが、
連作を読み進めるうち、あっさり味がクセになる。
ただ、ビリヤードというスポーツは
(ゲームではなくスポーツって言うのね)
申し訳ないが、あまり興味がないので、
ルールやプレーの仕方などに関する説明は、
ナナメ読みさせてもらった…。