カフェのオーナーと小説家が、ストーリーを構築するように、幽霊にまつわる謎を解いていく…。河野裕さんの「つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りていない」を読む。
ファンタジー?、ミステリー?
区別はつけられないが、とても不思議な魅力を持つ物語だ。
時には、泣きたいほど悲しく、
時には、胸の底にポッと灯がともるような…。
小説家、雨坂続と、元編集者で今はカフェ、
「徒然珈琲」のオーナー、佐々波蓮司、
二人の男が、幽霊にまつわる謎を解き明かしていく。
幽霊を視ることができる佐々波が、
探偵として謎を追って動き回り、
視ることのできない雨坂が、その謎をストーリーとして構築していく。
その絶妙な連携が、余計に、そのコンビ自体を謎めかす。
二人の会話には、多少、言葉遊びめいたところがあるが、
設定自体が異質なものだから、
異質だと受け入れてしまえば、
後は、すんなり、惹き込まれていく。
幽霊は未練を抱えてこの世にとどまる、と考える
佐々波は、その未練を果たさせるために動く。
ワタシは、実は、最近、大切な人を亡くした。
あまりにも突然、逝ってしまったものだから、
その人のいない世界で、途方に暮れている。
幽霊でもいいから、もう一度、会いたい、そう、願うのだが、
それは、こちらの自分勝手な願いなのだろう。
未練を残す幽霊にさせるのは、かわいそうだから。
舞台は神戸。
山の手にある北野坂で、二人の男が相手するのは幽霊。
小学校の図書室に出没する幽霊、「ほっしー」は、
生前、小学校時代に少しの間だけ親友であった
小暮井ユキを使って、何かを企んでいる…。