唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

父親が夢見たラクエンとは? 母親の違う四人の兄妹たちが、夏に出会ったものとは。小路幸也さんの「ナモナキラクエン」を読む。

 

ナモナキラクエン (角川文庫)

ナモナキラクエン (角川文庫)

  • 作者:小路 幸也
  • 発売日: 2014/05/24
  • メディア: 文庫
 

 

 

家族の物語を書かせたら、ホント、上手いと思う。

 

これまで、さまざまな家族形態、絆というものを

見せてくれた。

 

今回は、父親と兄妹四人、山(サン)、紫(ユカリ)、

水(スイ)、明(メイ)。

(名前からして、風変わり)

全員、母親は別で、しかも、すべて子どもを置いて

家を出て行ったという、ある意味、訳あり一家の話だ。

 

この作家さんの作品は、それほどの黒い悪意が存在しないという

ところ、ほぼ、安心して読める。

いや~な後味の残る結末もない、家族にゴタゴタがあったとしても、

それほど、誰も傷つかず、まあ~るく収まってしまう。

 

そして、家族の周りにいる人々が、みんな、善人である。

 

読んでいるこちらの心にシミを残さない。

 

大体の登場人物には、温かな居場所が用意されている。

家庭にしろ、バイト先の店にしろ。

 

そこには、常に、優しい人々が出入りして、

温かな雰囲気を醸し出している。

 

それこそ、現代にあって、ラクエンだよな、と思う。

 

 

ある夏の日、父親はサンに「ラクエンの話を聞いてくれ」と言った後倒れ、

そのまま帰らぬ人になった。

そして兄妹は、遺言に従ってそれぞれの母親に会いに行く。

 

母親たちは彼らにあやまるのだが、

彼らを置いて家を出た理由を誰も語ろうとしない。

 

その理由は謎のまま、母親を訪ねる旅を終え、

結末で明らかにされる。

 

ラクエンの真の意味とは…。