父親が夢見たラクエンとは? 母親の違う四人の兄妹たちが、夏に出会ったものとは。小路幸也さんの「ナモナキラクエン」を読む。
家族の物語を書かせたら、ホント、上手いと思う。
これまで、さまざまな家族形態、絆というものを
見せてくれた。
今回は、父親と兄妹四人、山(サン)、紫(ユカリ)、
水(スイ)、明(メイ)。
(名前からして、風変わり)
全員、母親は別で、しかも、すべて子どもを置いて
家を出て行ったという、ある意味、訳あり一家の話だ。
この作家さんの作品は、それほどの黒い悪意が存在しないという
ところ、ほぼ、安心して読める。
いや~な後味の残る結末もない、家族にゴタゴタがあったとしても、
それほど、誰も傷つかず、まあ~るく収まってしまう。
そして、家族の周りにいる人々が、みんな、善人である。
読んでいるこちらの心にシミを残さない。
大体の登場人物には、温かな居場所が用意されている。
家庭にしろ、バイト先の店にしろ。
そこには、常に、優しい人々が出入りして、
温かな雰囲気を醸し出している。
それこそ、現代にあって、ラクエンだよな、と思う。
ある夏の日、父親はサンに「ラクエンの話を聞いてくれ」と言った後倒れ、
そのまま帰らぬ人になった。
そして兄妹は、遺言に従ってそれぞれの母親に会いに行く。
母親たちは彼らにあやまるのだが、
彼らを置いて家を出た理由を誰も語ろうとしない。
その理由は謎のまま、母親を訪ねる旅を終え、
結末で明らかにされる。
ラクエンの真の意味とは…。