丸の内の片隅で営業する「ばんざい屋」、女将のおいしい総菜とミステリーを今夜も…。柴田よしきさんの「ふたたびの虹」を読む。
恋愛ミステリーがうまい。
しっとりと、心に染み入ってくる言葉が秀逸。
二十年近く前の作品だが、色あせない。
再読なのだが、新鮮な気持ちで読める。
一文字一文字、大事に読みたい、そんな想いを抱かせる。
こんな女将がやっている、こんな店が傍にあれば、
毎日でも通いたい。
街の片隅で、ひっそりと、営業するバーや小料理屋。
店には、控えめだが、心温まる料理を提供してくれるマスターや
女将がいる。
しかも、彼らは、店の客たちが持ち込む事件や謎を、
出しゃばらない態度で、いつのまにか、解き明かしてくれる。
例えば、北森鴻さんが描くところの「香菜里屋」シリーズのような。
この「ふたたびの虹」を読んですぐに、「香菜里屋」を思い出した。
この作品に登場する「ばんざい屋」の女将と、
「香菜里屋」のマスターは似ている。
七編が収められおり、ストーカーや殺人など、ぶっそうな物語もあるが、
女将である「吉永」が与える何気ないヒントが、
事件の真相を浮かび上がらせる。
そして、女将の温かな言葉と料理が、客の傷ついた心を癒してゆく。
女将には悲しい過去があるのだが、
その過去も、徐々に清算されてゆく…。
続編もあります。