楽しくて、あたたかな花咲小路商店街。今回の物語の主人公は、弱冠十九歳で駐車場の経営主のすばるちゃん。小路幸也さんの「花咲小路三丁目北角のすばるちゃん」を読む。
「花咲小路商店街」シリーズの五作目。
この作家さんの人気シリーズ、「東京バンドワゴン」と同様、
登場人物が全員、良い人。
一っかけらの悪意もなく、だからこそ、
安心して読んでいられる。
この「安心して読める」という特徴は、実に、大事。
今作の主人公、すばるちゃんも、
誠実で、まっすぐ、一点の曇りなしという、
まあ、普通だったら、「またまたぁ~」と、
眉に唾でもつけたくなるような性格。
だが、この作家さんの描く物語には、
こういう人物がゴロゴロ登場する。
読者であるワタシは、裏切りも、騙し討ちもない、
この緩やかで、温かで、夢のような世界で、
本当に、安心して、家にも、車にも、そして心にも、
カギをかけずに、出かけてしまえる。
殺戮、陰謀、、、そんなストーリーに疲れると、
戻ってきたくなる、そんな世界だ。
すばるちゃんと、そして、周囲の人々との物語は
これからも続くのだろうし、また、
淳ちゃん刑事や、花乃子さん、ミケさんなどが、
あちこちに顔を出すように、
すばるちゃんのこれからも、花咲小路商店街の別の物語で、
語られることもあるのだろう。