定年を目前にした刑事が、二十年前の放火殺人の真相に迫る。柴田哲孝さんの「赤猫 刑事・片倉康孝 只見線殺人事件」を読む。
地味だが読み応え十分の作品である。
定年を目前にして閑職に回った刑事が、
昔手掛け、未解決のままの事件を掘り起こす。
所轄、石神井署の刑事、片倉康孝が主人公の刑事モノだが、
シリーズ化され、三作目だという。
この、シリーズ途中から手を付けるというケースも、
もう、何度目か。
片倉がどうにも、気になっている未解決事件は、
二十年前の放火殺人。現場から姿を消した「鮎子」という女を追い、
一人でコツコツ調べ直していくうち、六十年前の放火事件に繋がっていく。
片倉は、被害者を含め、事件の周辺にいた人々の
人生をトレースしていく。
「一度でも気にしだすと、納得するまで調べなくては
気がすまなくなる」。
そうした主人公の刑事としての「性分」、まさに、
昭和の刑事像が息づいている。
ああ、こういうコツコツ型の刑事モノが好きだなぁと、
あらためて気づかされる。
天才だが変人の名探偵ではない、
等身大の刑事(だと思わせてくれる)が、
あちこち迷いながらも、必ずや真相にたどり着くと、
確かな信頼をもって、読み進めることができる。
ただ、結末は少々性急であり、
事件自体が風化しそうな、長い長い時をさかのぼらなければならず、
犯人を確保したという確かな手ごたえが薄かったような。
このシリーズ、一作目から読んでみようかしら。