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ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

コーダである主人公が手話通訳士として、ろう者の社会と、そして二つの殺人に関わっていく。丸山正樹さんの「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」を読む。

 

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

  • 作者:丸山 正樹
  • 発売日: 2015/08/04
  • メディア: 文庫
 

 

 

聴覚障がい者、そして、家族の中で唯一、聴者として

生まれた子ども、コーダ(Coda:Child Of Deaf Adults)としての

アイデンティティ。

 

ああ、こんなにも知らないことがあったんだと、

思わされた世界の物語。

 

私の母も身体障がい者ではあるが、

耳は聞こえ、目も見える。

 

障がい者とは言っても、実に、さまざまな世界があるとは、

頭ではわかっていても、なかなか、触れる機会はない。

 

だが、一つひとつの世界には、複雑な問題があり、

その問題が目の前に提示されるたびに驚き、

そして考えさせられる。

 

この作品は、そうした世界を紹介するノンフィクションではない。

 

特殊な舞台の上で繰り広げられるミステリーである。

 

元警察行政職員であった、主人公の荒井が、

手話通訳士の資格を取得し、ろう者たちと出会い、

警察職員時代に関わった殺人と、現在の殺人事件の真相に迫っていく。

 

荒井は、コーダとして、長い間、屈託や苦悩を抱えて生きているのだが、

事件との関わりは、自身がその屈託に決着を付ける、きっかけにもなる。

 

そして、事件を追う中での何森刑事との出会い。

 

荒井もそうだが、この何森という刑事も、

取り扱いが難しそうなキャラで、

二人からは同じような匂いがする。

 

この二人の魅力にやられる、というところまでは、まだ行かないが、

続編が出ているということだから、

続けて読むうちに、はまっていくのかもしれない。