唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

殺し屋に命を狙われながら、三人は真相を追う…、「通り魔殺人」の真の意味は…。太田愛さんの「犯罪者」を読む。

 

犯罪者【上下 合本版】 (角川文庫)

犯罪者【上下 合本版】 (角川文庫)

  • 作者:太田 愛
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: Kindle版
 

 

 

クセの強い、一匹狼の刑事あるいは探偵が、

真相を追うストーリーもいいけれど、

ニワカのチームが一つになって、動き回る物語は、

チームの関係性がどんどん濃密になっていく過程を楽しめる分、

ワクワクが倍増する。

 

次から次へとストーリーは目まぐるしく転げまわり、

息つく暇もない。

 

殺し屋に追われながら真相を追い求めるという設定は、

ヒリヒリ感を否応なしに高める。

 

企業のスキャンダル隠し、産業廃棄物の不法投棄、

食品へのウイルス混入、そして、殺人…。

 

スリリングな展開になるのは必至、もう、

要素はすべて揃ったといったところ。

 

理不尽なことばかりが起こる世の中で、

誰かに押し付けられそうになる理不尽さを跳ね返し、

権力を持たない弱者が反撃を始める。

 

 

深大寺駅前で発生した通り魔殺人。

四人が死亡し、修司という若者だけが生き残る。

だが、突然現れた男が「あと十日間生き延びれば助かる」と、修司に告げる。

 

その日から修司は、殺し屋に命を狙われ始める。

だが、所轄の刑事、相馬に危ういところを助けられ、

修司に話を聞いた相場は、通り魔殺人には別の意味があるのではと

疑い始める。

 

「十日間生き延びろ」とは、どんな意味なのか。

 

さらに、相馬の友人で、ライターの鑓水も巻き込まれ、

三人は殺し屋に追われながら、真相を追い始める。

 

修司、相馬、鑓水の物語はシリーズとなって、

この作品を含め、すでに三作出ているのだと途中で知り、

殺されないで済んだのだとホッとするのだが、

今作のスッキリとはしない幕切れは、これが現実なのかと、

いうところか。

 

 

それでも、修司のまっすぐな力強さはすがすがしく、

そのすがすがしさが、スッキリしないモヤモヤを薄めてくれる。

 

掴みどころのない鑓水や、反対に生真面目な相馬。

天才肌のスーパーヒーローではなく、派手なところもないが、

この二人の、地に足のついたキャラも抜群にいい。

 

この三人の物語がまだまだ読めると思うと、楽しみで、嬉しい。