頭脳明晰なのに、天性の人の良さ、猫弁と亜子の未来はどうなる…。大山淳子さんの「猫弁と鉄の女」を読む。
「猫弁」新シリーズの二作目。
頭脳明晰、だが、人の良さも天才的なため、
常に損ばかり(いや、損と言うのは、世間の金銭的な考えを
先にしているから、彼にとってはどうでもいいのだろう)。
だからこそ、何とも心の洗われるシリーズなのだ。
百瀬も、そして大福亜子も、人として、逸材だ。
何でもできてしまう人間なんて、ひょっとしたら
数多く存在するのかもしれないが、
「人として逸材」という人間には、残念ながら、
まだ出会ったことがない。
そして、人として、まっとうであることの
何と、難しいことよ。
作品中、大福亜子も感じていることだが、
「まっとうな人が変わり者といわれる」社会なのかもしれない、
今は…。
百瀬と亜子のやり取りは、浮世離れし過ぎており、
だからか、何かとっても尊いものを見せられたような気がして、
涙がボロボロ流れる、ことがある。
そして、やっと、二人の仲も、
婚約という状況から「同棲」へと進展しそうで、ホッとしたが…。
仕事の途中で出会った老婦人、小高トモエ。
彼女が連れていた犬、サモエドの散歩役を務めることになった百瀬。
そして、元依頼人だった、議員の秘書、佐々木の縁で、
鉄の女と言われる二世議員、宇野勝子のサポートをする羽目に。
勝子は選挙戦を戦うため、「もえぎ村の杉林を伐採して、
東京から花粉を一掃する」という公約を掲げるのだが…。
もえぎ村には、山の神、「もりりん」が棲んでおり…。