「彼女」は、果てしなく暗く、重い生の最後に何を見たのか…。変人刑事、三ツ矢と若手、田所のコンビ再び。まさきとしかさんの「彼女が最後に見たものは」を読む。
前作に続き、変人刑事、三ツ矢と若手、田所のコンビ。
事件に取り組む三ツ矢は言う。
「知りたいと思いませんか?」と。
「知らなくてもいい真実」というセリフがある。
事件に関わった、巻き込まれた人にとって、
「ワケが分からない」ことで、その後を過ごせるのか。
あるいは、知ったからと言って、心の穴は埋まるのか。
どちらにしろ、失ったものは二度と元には戻らない。
別々の事件の関係者目線で物語が進むことによって、
その別々だったものの関連性が、徐々に浮かび上がってくる。
そして、その間に立つのが、いつも、三ツ矢。
現実社会、特に警察のような組織で、
三ツ矢のような人間は、不適合として扱われるだろう。
常に、己一人の頭の中で思考、推察し、完結しようとする。
コミ障と言われても、仕方ない。
有能であるだけでは、やっていけない。
そんな彼が、警察の中で成立するのは、きっと、
周りの目が優しいからだろう。
田所にしても、実に、我慢強い、と思う。
彼以外に、時々、三ツ矢と繋がりがありそうな刑事仲間が
登場するのだが、彼らの三ツ矢に向ける目は、それほど冷たくはない。
テーマは、相変わらず、暗く、重たい。
愛する者の死、倒産、借金、更年期障害、ホームレス…、これでもかと、
突き付けてくる。
そして、砂上の楼閣のようなSNSの世界。
だが、読み終えて、イヤミスのような「置いてけぼり」感を喰らわないのは、
被害者である女性の、想いが伝わるせいか。
後から、ジワジワ来る作品だ。
何度でも、読み返したい。