人が隠す、心の奥底をどうしても、暴かざるを得ない。これは、癖なのか、性なのか。とんでもない探偵、みどりの、あくまでも苦い五つの物語。逸木裕さんの「五つの季節に探偵は」を読む。
装丁のホンワカとした雰囲気にだまされた。
悪い意味での裏切りでは、ない。
高校生から社会人へ。探偵の素質を持ったみどりが、
本当に探偵になって、仕事をこなしていく過程、
これは、決して甘いミステリーでも、成長物語でもない。
大人の、苦味満載のストーリーである。
みどりは、とんでもない探偵だった。
真実の知りたがり、人が隠し持っているものを覗きたいという欲求、
こんな癖、あるいは性。
人に疎まれても、人の内面を見たいという欲求、いや、欲望は、
みどりの業を見せられているようで、
いささかだが、途中から、ゾクゾクとした怖ろしさを感じた。
「向こう側」へ行ってしまいそうな人間なのに、
こちら側に踏みとどまっていられるのは…。
怖ろしさを感じながらも、
みどりが、この先、どこまで行ってしまうのか、
見続けていきたい気がする。
五編目、「ゴーストの雫」で、みどりは、会社の課長になっており、
おまけに、出産をしたらしいと、知らされるのだが、
その経緯については、まったく触れられていない。
それって、とっても、気になる…。