「困っている人には何かしてあげないと」、小五の咲陽は、「父親が家に帰ってこない」と言う同級生の小夜子を家にかくまうのだが…。天祢涼さんの「陽だまりに至る病」を読む。
前二作ほどの切なさは、感じなかった。
それは、この作品に登場する、小五の二人の女の子、
咲陽と小夜子が、なかなかのたくましさを備えているからだろうと思うのだ。
彼女らは、大人ではないが、子どもでもない。
小夜子のたくましさは、生い立ちのせいもあるだろうが、
咲陽は、真実に傷を負いながらも、
打ちのめされて終わり、というわけではない。
小夜子の心を思いやる、それこそ、大人顔負けの
洞察力を持っている。
咲陽が事件に関わっていく導入部分には、
とまどいというか、違和感を覚えてはいた。
ま、大人顔負けの思考と、行動力を持っているという
キャラ設定だろうからと、納得はしたが。
とまどいと違和感は、真壁視点の章に入り、解消され、
落ち着いた。事件の話は、大人の、刑事の目線がしっくりくる。
今回、仲田がこれまでのような関わり方をせず、
出番が少なかったのは。
「すべての子どもを助けるのは現実的ではない。信じられる
子どものことは信じて、あとは任せるしかないんです」という
信念に基づいた結果なのだろうが、
少々、物足りなかった。
仲田については。
真壁の、「なにが君をここまで子どものために駆り立てるんだ」という
つぶやき。
そう、私たちも同じように、仲田のことを、もっと知りたい…。