唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

殺人犯が殺されていく…、「セクメト」とは、そして、謎の少女の正体とは?太田忠司さんの「セクメト」を読む。

 

セクメト (中公文庫)

セクメト (中公文庫)

  • 作者:太田忠司
  • 発売日: 2015/01/30
  • メディア: Kindle版
 

 

 

設定や物語の展開が、少しずつ、どこかで読んだような、と、

思わされる作品だったが、テンポが良くて、

結構、前のめりで読み終えた。

 

殺人事件の容疑者が、刑事の張り込み中に惨殺される。

容疑者を、目の前で殺されてしまった刑事、和賀が、

その後、事件に深く関わっていく。

 

さらに殺人は続き、その被害者がいずれも、

一人の人間から臓器移植を受けていること、

過去に誰かを殺していることが判明していく。

 

遺伝子配列、超能力、臓器移植、マッドサイエンティスト、そして古武術…、

多くの要素が絡み合い、SFっぽい警察小説に仕上がっている。

 

そして、現場に姿を現す夏月という少女の謎めいた言動。

 

和賀の視点で物語は進むのだが、主人公にしては、

印象が薄くなっているのは…。

 

個人的には、夏月の祖父が渋くて、イイ感じ。

 

続編が、他二作出ているそうだから、

回収できなかったところは、続編に持ち込しか?

 

 

 

老人の孤独死が数十年前の殺人につながる…、そして、一人の女の悲しい過去を片倉が追う。柴田哲孝さんの「黄昏の光と影」を読む。

 

黄昏の光と影 (光文社文庫)

黄昏の光と影 (光文社文庫)

  • 作者:柴田 哲孝
  • 発売日: 2016/02/09
  • メディア: 文庫
 

 

 

この作家さんの作品を、続けざまに読んでいる。

 

先日読んだ「赤猫」から戻る、片倉シリーズの一作目。

 

「赤猫」もそうだったが、このシリーズは、

現在の事件が過去の事件に繋がっていく、

それも、何十年も前の、関係者の過去を辿るという設定が重なっている。

 

だからか、歴史をなぞるような感じで、

起きたての事件の犯人を追う緊迫感や、

目まぐるしく展開していく物語に伴うドキドキ感は薄い。

 

だが、地道な捜査は、実に地味な分、

片倉のこだわりや考え方に付き合い、

一つひとつピースがはまっていくジグソーパズルのように、

謎が解明されていく充足感がある。

 

そして、「赤猫」では刑事らしくなっていた柳井がまだ新米で、

片倉の後を必死でついていく姿が新鮮だった。

 

石神井署管轄内のアパートで、一人の老人、小切間清が孤独死した。

一見、事件性がなさそうな老人の死だったが、

その部屋に置かれたスーツケースの中から、女性の白骨死体が見つかる。

 

女性の身元を探る、片倉の長い捜査が始まる。

 

 

伯父の死は本当に、自殺なのか…。私立探偵と酒と女と殺人と。柴田哲孝さんの「渇いた夏」を読む。

 

渇いた夏 (祥伝社文庫)

渇いた夏 (祥伝社文庫)

  • 作者:柴田 哲孝
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 文庫
 

 

 

殺人、酒、女。。。

そして、タイトルの「渇いた…」ときたら、もう、

ハードボイルドのおぜん立ては整った、という感じ。

 

物事を枠の外から眺めるような、主人公、神山健介の性格も、

やはり、ハードボイルドにふさわしい。

 

少年の頃、一緒に暮らした伯父が死に、

その家を相続する。

 

私立探偵の神山は、伯父の死をきっかけに、

少年時代を過ごした福島に戻ることを決める。

 

伯父は自殺とされているが、

彼が残した、いわくありげな鍵、

亡き母の写真、殺人事件の調査ノートといったものを調べるうち、

神山は、伯父の死に違和感を持つようになる。

 

妹の死の真相を探ってほしいと、神山に依頼する池野弘子という女、

そして、時々、神山の周辺で「謎の女」の影がちらつき…。

 

単純に楽しめた。

 

 

 

コーダである主人公が手話通訳士として、ろう者の社会と、そして二つの殺人に関わっていく。丸山正樹さんの「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」を読む。

 

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

  • 作者:丸山 正樹
  • 発売日: 2015/08/04
  • メディア: 文庫
 

 

 

聴覚障がい者、そして、家族の中で唯一、聴者として

生まれた子ども、コーダ(Coda:Child Of Deaf Adults)としての

アイデンティティ。

 

ああ、こんなにも知らないことがあったんだと、

思わされた世界の物語。

 

私の母も身体障がい者ではあるが、

耳は聞こえ、目も見える。

 

障がい者とは言っても、実に、さまざまな世界があるとは、

頭ではわかっていても、なかなか、触れる機会はない。

 

だが、一つひとつの世界には、複雑な問題があり、

その問題が目の前に提示されるたびに驚き、

そして考えさせられる。

 

この作品は、そうした世界を紹介するノンフィクションではない。

 

特殊な舞台の上で繰り広げられるミステリーである。

 

元警察行政職員であった、主人公の荒井が、

手話通訳士の資格を取得し、ろう者たちと出会い、

警察職員時代に関わった殺人と、現在の殺人事件の真相に迫っていく。

 

荒井は、コーダとして、長い間、屈託や苦悩を抱えて生きているのだが、

事件との関わりは、自身がその屈託に決着を付ける、きっかけにもなる。

 

そして、事件を追う中での何森刑事との出会い。

 

荒井もそうだが、この何森という刑事も、

取り扱いが難しそうなキャラで、

二人からは同じような匂いがする。

 

この二人の魅力にやられる、というところまでは、まだ行かないが、

続編が出ているということだから、

続けて読むうちに、はまっていくのかもしれない。

 

 

 

 

「女の人の声が聞こえるんです…」、心神耗弱?ではなく、オカルト色の濃い刑事モノ?、誉田哲也さんの「もう、聞こえない」を読む。

 

もう、聞こえない (幻冬舎単行本)

もう、聞こえない (幻冬舎単行本)

  • 作者:誉田哲也
  • 発売日: 2020/08/25
  • メディア: Kindle版
 

 

 

傷害致死事件、魅力あふれる刑事たちとくれば、

この作家さんお得意の警察小説で、

ストーリーの展開にワクワクしながら読み進めていたのだが。

 

(この作品の主人公になるのか)寺田真由が殺され、

土の中に埋められ、そして霊になって土中から

浮遊する段階にいたって、ありゃりゃ、オカルトもの?と、

方向転換せざるをえなくなった。

 

浮遊霊が、埋められた場所から東京へ戻るため電車に乗ったり、

その車中で、福沢諭吉の霊に会ったりとなると、

ユーモアミステリーも混じってる?と、思うしかなくなった。

 

これはこれでと思えば、その後の展開もテンポがよく、

軽めのミステリーとして楽しめた。

 

「姫川」シリーズの菊田刑事の妻、梓が捜査員の中に入っていて、

嬉しくもなったし。

でも、「姫川」シリーズの方では、こんな感じに描かれていたっけかな、

そもそも刑事だったっけ、

へぇ~、こっちでは、しっかり刑事を勤めてるんだと、

(旦那は出てこなかったけど)なかなかのお遊びに

ニヤニヤしてしまった。

 

それに、課長の土堂が、なかなかいい味を出しているし、

その特殊能力にも興味をひかれるし…。

 

今度は、土堂を始めとした刑事たちの物語も読みたい。

そこに、霊が絡んできても、ま、いいっか。

 

定年を目前にした刑事が、二十年前の放火殺人の真相に迫る。柴田哲孝さんの「赤猫 刑事・片倉康孝 只見線殺人事件」を読む。

 

赤猫: 刑事・片倉康孝 只見線殺人事件 (光文社文庫)
 

 

 

地味だが読み応え十分の作品である。

 

定年を目前にして閑職に回った刑事が、

昔手掛け、未解決のままの事件を掘り起こす。

 

所轄、石神井署の刑事、片倉康孝が主人公の刑事モノだが、

シリーズ化され、三作目だという。

 

この、シリーズ途中から手を付けるというケースも、

もう、何度目か。

 

片倉がどうにも、気になっている未解決事件は、

二十年前の放火殺人。現場から姿を消した「鮎子」という女を追い、

一人でコツコツ調べ直していくうち、六十年前の放火事件に繋がっていく。

 

片倉は、被害者を含め、事件の周辺にいた人々の

人生をトレースしていく。

「一度でも気にしだすと、納得するまで調べなくては

気がすまなくなる」。

そうした主人公の刑事としての「性分」、まさに、

昭和の刑事像が息づいている。

 

ああ、こういうコツコツ型の刑事モノが好きだなぁと、

あらためて気づかされる。

 

天才だが変人の名探偵ではない、

等身大の刑事(だと思わせてくれる)が、

あちこち迷いながらも、必ずや真相にたどり着くと、

確かな信頼をもって、読み進めることができる。

 

ただ、結末は少々性急であり、

事件自体が風化しそうな、長い長い時をさかのぼらなければならず、

犯人を確保したという確かな手ごたえが薄かったような。

 

このシリーズ、一作目から読んでみようかしら。

 

 

もう一つの「ON 猟奇犯罪捜査斑・藤堂比奈子」。内藤了さんの「OFF 猟奇犯罪分析官・中島保」を読む。

 

 

 

もう一つの「ON 猟奇犯罪捜査斑・藤堂比奈子」。

こちらは、中島保の視点で描かれている。

 

つまり、「ON」と「OFF」は表と裏、裏と表である。

 

「ON」の方では、犯罪者の悪意が充満していたけれど、

それに逆らうように、比奈子の熱い思い、がんさんや

東海林、死神女史など、仲間との絆があたたかく、

それが救いとなっていた。

 

だが、「OFF」には救いがない。

比奈子が登場するまで、

胸クソ悪くなるような悪意が染み出し、

さらに、保の葛藤、絶望がどんどん膨らんで、

かなり息苦しい。

 

保側から描かれているので、

もちろん、捜査斑チームのほっこりするようなやり取りもない。

 

視点が変わることによって、全く別の面が浮かび上がるのかとも

思ったが、それもなかった。

 

それならば、この作品の意味は…。

 

そうだ、「OFF」に少しでも救いがあるとすれば、

結末に死神女史が登場し、保にかけた言葉だろうか…。