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ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

大沢在昌さんの「魔女の笑窪」を読む。

 

魔女の笑窪 (文春文庫)

魔女の笑窪 (文春文庫)

 

 

 

この作家さんの、タフな女刑事を主役に据えた作品は多く、

また、タフなだけでなく、そのキャラや言動が魅力的だ。

 

彼女らは奔放で型やぶりだが、芯がある。

 

そして、この作品の主役。

女刑事が表なら、こちらは裏の社会でコンサルタント業を営む女性、水原。

裏で生きるからには、非合法な商売に手を染めることも、

暴力団と手を組むことも、時には殺人を画策することもある。

 

彼女の武器は、相手を見抜く力。

その能力は、凄惨な過去が彼女に与えたもの。

 

「地獄島」と呼ばれる、売春産業で栄えた島で、

夜通し男たちの相手をさせられ、

それが一生続く。

 

島から抜け出そうとするものは、島の番人につかまり、

牢獄に閉じ込められるか、殺される。

 

そんな地獄から唯一逃げおおせたのが、水原だ。

 

消したい、忘れ去りたい過去だが、

いつもその過去におびえている。

 

地獄から生還し、闇の社会でのし上がった彼女だから、

ハンパないタフさを持ち合わせているだろうと思う。

 

だが、無理やり過去に戻されそうになる場面では、

泣き、わめき、助けを乞う。

 

彼女はスーパーヒロインではなく、

哀しい女なのだと気づかされる。

 

過去と対決する覚悟を決めた彼女は…。

 

売春産業で成り立っていた島というのは、

実際にあるらしい。

 

「売春婦が島から泳いで逃げようとした」という話も、

事実としてあるとか…。 

 

吉川英梨さんの「警視庁『女性犯罪』捜査斑警部補・原麻希 蝶の帰還 上下」を読む。

 

警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還 上 (宝島社文庫)

警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還 上 (宝島社文庫)

 
警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還 下 (宝島社文庫)

警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還 下 (宝島社文庫)

 

 

 

「女性犯罪捜査斑」シリーズの五冊目。

「ハラマキ」シリーズなら、通算十冊目。

 

秘匿捜査斑時代の悪夢がよみがえる。

 

下北沢で女性の死体が発見されたが、

その現場の住所、そして現場に残された張り紙、

それは八年前、麻希たちを苦しめた「アゲハ」事件に

あまりにも酷似していた。

 

さらに、「アゲハ」事件を踏襲するように、

公安刑事襲撃、爆破テロが続くと思われたのだが…。

 

「アゲハ」事件では、麻希の子どもたちが誘拐された。

今回も警察官の子どもの誘拐があるのか…。

 

伝説のテロリスト、「アゲハ」の行方は…。

 

 

女性犯罪捜査斑の面々は相変わらず個性的。

個性的過ぎて、バラバラのように見えるチームだが、

その繋がりは感じられる。

 

ただ、登場人物が多いからか、視点が散在して、

全体的にぼんやりとしてしまったような。

 

そして、公安警察、公安刑事の在り方が、

いまわしいものに見えてくる。

 

だが、「アゲハ」の想い、強さには感動を覚えた。 

 

佐藤青南さんの「行動心理学捜査官・楯岡絵麻 ストレンジ・シチュエーション」を読む。

 

 

 

「エンマ様」シリーズ五冊目。

 四つの事件が描かれる。

 

 取調室内での犯人との攻防が多かったが、

現場に飛び出しての活躍も目立ってきた感じだ。

 

 舞台がどこになろうと、エンマ様の観察力、洞察力はいつも通りで、

相棒、西野とのやり取りも相変わらず楽しませてくれる。

 

 

警察官の拳銃自殺が発端となった第一話。

ある民家で、五十代の夫婦が二人組の強盗に殺害された。

外出先から戻った夫婦が強盗と鉢合わせになったものと

考えられる。

 

捜査が進むうち、拳銃自殺した警官、宮田が

犯人の一人である疑いが濃くなってきた。

 

捜査一課刑事、綿貫は、同期の宮田が殺人犯であるという

疑いを受け入れられない。

 

そんな中、宮田の共犯であるという男が出頭し、

強盗には入ったが、夫婦を殺害したのは宮田だと主張する…。

 

しかし、この事件には、大きな闇が隠されていた。

 

 

行動心理学を駆使して、犯人の嘘のほころびを見つけ、

真実を言い当てるのがこれまでのエンマ様の魅力だが、

この作品では、事件の真実に迫っても追求をやめてしまう

エンマ様が描かれる。

 

筒井に捜査を続行しないわけを尋ねられたエンマ様は

「見たくないんです。見てしまったら、調べないわけには

いかなくなる。そうなると、たぶん誰も幸せにならない。」

 

こんな面もあるのね、エンマ様…。

 

 

 

内藤了さんの「Burn 上下 猟奇犯罪捜査斑・藤堂比奈子」を読む。

 

BURN 上 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

BURN 上 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

 

 

 

 

BURN 下 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

BURN 下 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

 

 

 

 

長い物語が完結し、「猟奇犯罪捜査斑シリーズロス」を覚えながらも、

ホッとした気持ちがどこかにある。

 

 猟奇犯罪捜査斑の、誰一人かけてはいけない仲間の、

最凶の敵に対する死を賭した戦いを目撃してきたからだろうか。

 

 

ただ、一話完結だったシリーズも、最凶の敵の影が

ちらつきだしてから、続きを待たなければならなくなって以降、

物忘れが激しくなった大オバサンとしては、

新刊の前に、おさらいをしないと全容を見失ってしまいそうで。

 

だが、あの過去の事件のひとつひとつが、

この大きな闇の組織の犯罪へと繋がっていくのだから、

シリーズ全巻が壮大なひとつの物語なのだろう。

 

仲間のひとりひとりが、自分の仕事をきっちりと、

死力を尽くして遂行し、どこを読んでも、

「仲間の絆」だらけのエピソードで仲間への想いがあふれ、

なかなか手に入れることの難しい、理想だろうなと思いはしても、

その温かさが切ない。

 

そして、もう一つ切ないのが、

比奈子の保への、保の比奈子への想い。

 

ああ、こういう結末なのね。

納得…。

 

終わってはしまったけど、

どこかで、また、厚田班の面々に会いたい。 

 

浅暮三文さんの「誘拐犯はカラスが知っている 天才動物行動学者白井旗男」を読む。

 

誘拐犯はカラスが知っている―天才動物行動学者 白井旗男―(新潮文庫)

誘拐犯はカラスが知っている―天才動物行動学者 白井旗男―(新潮文庫)

 

 

 

面白さが後からジワジワとやってくるタイプ、

なのかもしれない。

 

 少々偏屈だが、頭脳明晰、洞察力に優れた動物学者が、

動物の行動に関する知識を駆使して、さまざまな事件の謎を解く、

七編の連作モノ。

 

 

白井は、両親が旅行中、消息不明となってしまったことから、

引きこもり状態になった。

そんな白井を、大学時代の後輩で、

現在は警察犬のハンドラーである原友美が外へ引っ張り出そうと、

事件の謎解きを頼む。

 

カラスの行動から、誘拐された人質を発見する「Case 1 烏合の地」から、

鳩の審美眼が、盗まれた絵画の行方を突き止める「Case 2 翼と絵画」、

リスの生態からバラバラ殺人事件の犯人に行きつく

「Case 3  チャップリンの新しい靴」など、さまざまな動物の生態が

オマケの知識として楽しめる。

 

特に、「翼と絵画」では、鳩や文鳥は絵の区別がつき、

その巧拙も見分けるほどの認知力を持つという話は興味深い。

 

白井の推理で事件が解決されるにつれ、

友美、鑑識課の岸本、そして白井の能力を認める

捜査一課の刑事、土橋というチームが出来上がっていく。

 

そして、最後のエピソードでは、行方不明になった両親の謎が

解き明かされる。

 

シリーズ化された小説を読み続けたいと思うのは、

まず、登場人物に惚れこんだときだ。

 

紙の上で、泣き、笑い、失敗し、行き詰まり、悩み、

それでも立ち止まらず結末にたどり着く。

 

その一挙手一投足に、ワタシたちは感情移入し、

一緒にワクワクしたり、時にはじわーっと涙を滲ませたりもする。

そうなって、新刊を待ち焦がれるのだ。

 

この作品に関しては、残念ながら、

そこまで心を持っていかれなかった…。

 

 

 

内藤了さんの「魍魎桜 よろず建物因縁帳」を読む。

 

魍魎桜 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

魍魎桜 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

 

 

このシリーズが始まった時の春菜は、

ただただ、鼻っ柱の強い、独りよがりの女という感じだったが、

まっすぐで、一途な女の子へと、そのイメージは変わっていった。

 

 そして、徐々に、仙龍への思いが溢れてきて、

かわいらしい。

 

 今作まで来て、サニワの意味、存在意義というものを真剣に

考え始めている。

 

 

 

桜は昔から、数多くの作品に取り上げられ、

描写されてきた。

 

その華麗な姿は、あまりにも華麗であるがゆえに、

この世のものではないものとの関わりがイメージされる。

そして、時には「死」とも結びつく。

 

だが、それはあくまでも、人の勝手な思い込みで、

桜は桜でしかなく、完璧な美しさを誇り、そして

瞬く間に、この世から消え去っていく。

 

今回、隠温羅流の職人たちが曳くのは、

樹齢八百年の魂呼び桜である。

 

改めて思うが、最後の儀式に臨む職人たちは、

実に格好が良い。だが、それは、この世とあの世の境に居て、

悪縁を断ち切るために命を懸ける男たちだからである。

 

そして、魂呼び桜を曳く場面は、感動的だ…。

 

 

猿沢地区の地滑り跡から、漆喰の繭状のものに包まれた

男性の人骨が発見された。

それは、はるかはるかの昔。

この地で人柱となった旅の僧のものだと推測された。

 

民俗学的見地から、小林教授がその遺骨に関わっていく。

 

そのころ、同地区では老婆の死霊が相次いで目撃され、

その死霊に出会ったものは体の不調を訴える、

あるいは命を落としてしまう。

 

悪しき縁は断ち切れるのか。

 

春菜、仙龍、コーイチ、雷助和尚、小林教授、

いつもの面々が顔をそろえる…。

 

 

 

小島正樹さんの「扼殺のロンド」を読む。

密室モノである。

 そういえば、最近、減った感のある

密室モノ。トリックが出尽くしたのか。

 

 密室モノ=名探偵登場というイメージがベタ~っと貼りついて

しまっている。

 「名探偵、皆を集めて『さて』と言い」と皮肉られる(?)

ように、その勿体ぶった感じが苦手だ。

 

 

だが、この作品。

 

二人の刑事コンビと一人の名探偵の三人のやり取りが

実に面白い。

 

刑事、小沢に名探偵、海老原がいじられるシーンも

ニヤニヤが止まらない。

 

最後は名探偵がきっちり、名探偵の仕事をするのだが、

それまでは、小沢と、そして海老原には「影が薄い」と

揶揄される笠木の二人が、

コツコツと地道な捜査を続ける。

 

それは、ワタシの好みであるフツーの警察小説の形態であることで、

安心して読み進められる。

 

トリックもツッコミどころはいろいろあるが、

ストーリー展開に勢いがあって、

うん、面白かった。

 

鍵のかかった廃工場の中、

壁に激突しドアがあかなくなった車の中で、

男と女が死んでいた。

 

女は扼殺された後、腹から胃や腸などの内臓が抜き取られ、

男は高山病を発症していたという。

 

さらに、二人の親族が次々に、密室の中で殺害されていく。

それも、扼殺という、同じ殺害方法で…。

 

 

扼殺のロンド (双葉文庫)

扼殺のロンド (双葉文庫)