唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

困った死体、というより、困ったちゃんチーム? 浅暮三文さんの「困った死体」を読む。

 

困った死体 (集英社文庫)

困った死体 (集英社文庫)

 

 

 

登場人物たちのキャラの濃さで、押し切られそうな感じだった。

 

四編を収めた連作モノ。

 

断食中に食中毒死した教団の教祖、停電中に感電死した

バンドのギタリスト、夏の真っ盛りの屋外で凍死した女性、

そして、砂漠の真ん中で溺死した金融業者。

 

謎だらけの変死事件だけを扱う、刑事、鑑識課員、そして

女性監察医、「サーカス」と呼ばれる特殊班の三人組だ。

 

事件もヘンテコなら、三人組もクセがものすごい。

 

刑事、大黒福助は、捜査に煮詰まると精神がヤバくなりそうだし、

鑑識課員の数之十一は、現場でダジャレを連発、監察医、栗栖アメリは、

タイトなミニスカートと、ピンヒールというド派手な格好で

現場に臨場し、捜査に首を突っ込んでくる。

 

クセモノぞろいだが、もちろん、三人とも腕は一流。

 

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ストーリー自体はギャグっぽいのだが、

謎は興味深い。

 

ギャグっぽいといえば、被害者の名前はいつも、

「前田五郎」、死体発見者もいつも、森田という老人。

 

これも、何かの伏線かと思ったけど…。

 

ところで、我孫子武丸さんによる解説では、

「前田五郎」は坂田利夫の相方の名前らしいのだが、

それにも意味があるのか、ないのか。

 

芸人、「前田五郎」さんの名前は、ワタシでも、

かろうじて覚えていたけど。

「歌舞伎町セブン」シリーズの短編集。誉田哲也さんの「歌舞伎町ゲノム」を読む。

 

歌舞伎町ゲノム

歌舞伎町ゲノム

 

 

 

現代版「必殺」、「歌舞伎町セブン」シリーズの短編集。

五編が収められている。

 

短編構成のためか、前の作品で感じたヒリヒリが足りないような。

少々、物足りなさがあった。

 

「始末」の意味、必然性も薄いような。

歌舞伎町セブンって、街の秩序を破壊する悪意に対抗するんじゃ

なかったっけ。

 

セブンのメンバー、結構、危うい関係だ。

「仲間意識」で繋がっているというわけでもなく。

当初のセブンから一人減り、「死体処理」のシンちゃん、

あるいは、土屋がメンバー入りするのだとしたら、

ますます、危うくなる。

 

それに、今回は、ミサキが、「ただただ、アブナイ奴」という描かれ方で、

あまりフォローがなく、それも不満が残る。

息詰まるような陣内と東とのやり取りも少ないし。

 

続編に期待…。

 

冷厳だが、温かみのある教官の目が、彼らを救う…。

 

教場 (小学館文庫)

教場 (小学館文庫)

 

 

いつも思うが、実に、短編の名手である。

 

登場人物はそれほど多くないが、濃密な人間関係を

感じさせる。

 

警察学校という、ある時期、一か所に押し込まれる生活だからこそ、

濃密にならざるを得ないか。

 

警察官を作り上げる学校とはいえ、

そこには、一般社会と同様、いやそれ以上の

妬み、嫉みが渦巻いている。

 

警察学校初任科第九十八期短期過程の風間学級、

その学生がたちが、全六話、それぞれの中心人物となる。

 

そして、教官の風間という人物像は、「冷厳な鬼教官」と

なっているが、全話を読むと、もちろん、厳しい目を持ち、

容赦ない判断を下すのだが、学生たちの心の襞も、じっと見つめ、

見守るということが分かってくる。

それは、「師」と呼べる思慮深く温かい人間の目だ。

 

 

警察学校とは、学生たちを篩にかけるところ。

厳しい教官たち、キツイ講習、そして実習。

いつ何時、足をすくわれるかもしれない、そんな毎日。

 

だが、風間は言う。

「ここは、たしかにふるいだ。だが、その逆でもある。残すべき人材だと

教官が判断すれば、マンツーマンで指導しても残してやる。そういう場所だ」と。

 

鋭い観察眼を持ち、かつては、強行班の優秀な刑事であった彼。

 

その経歴や背景は、多く語られない。

 

もちろん、主人公は、学生ひとりひとりだから。

 

でも、やはり、風間から目が離せない。

 

 

 

三十七人からスタートしたこの学級も、

一話一話、進むごとに、一人ずつ減っていく。

 

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各話の物語は唐突に終わり、その決着は、次のストーリーの中で

語られる。

トラブルに巻き込まれた学生は、どうなったのだろうか、

知りたくて、知りたくて、たまらなくなる。

 

その展開が見事で、知らぬ間に、一気に読破していた。

 

そして、エピローグで明かされる、風間教官の…。

三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち」を読む。

 

 

 

「本は、さまざまな人生を垣間見ることができ、

そして、本自体にも所有者の人生が宿る」。

 

鎌倉で古書店を営む栞子さんと、夫になった五浦大輔の

新しい物語が始まった、のか?

 

新たに、栞子さんと大輔の娘も登場した。

 

今作では、これまでの登場人物とからめて、

本にまつわる過去の話を、栞子さんが、扉子に語って聞かせるという形式。

 

四つの物語が収められている。

 

そして、「からたちの花 北原白秋童謡集」、

「雪の断章」(佐々木丸美)、「王様の背中」(内田百閒)の

三冊が紹介されている。

 

 

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静かな古書店の中を、時がゆっくり流れていくような、

そんな文章と、柔らかな日差しを浴びる栞子さんの

淡いイメージ、それは、今まで通り。

 

「栞子さんにそっくり」と描写される扉子の印象は、

どちらかというと、母親の篠川智恵子に近いような。

 

静かな時をかき乱すような、少々、不穏な空気を感じるのは、

穿ちすぎだろうか。

 

佐藤青南さんの「ヴィジュアル・クリフ」を読む。

 

 

 

エンマ様こと、楯岡絵麻シリーズの6作目。

 

行動心理学を応用して取り調べを行い、容疑者を追い詰めていく

エンマ様と、相変わらずキャバ通いがやめられない、

相棒、西野のコンビは健在。

 

ただ、今作は、行動心理学の恩師が相手となって、

普段とは違うエンマ様がみられる。

 

というか、どうも、勝手が違うのか、

いつもの鋭さが見られない。

 

結局は、葛藤しながらも、相手が恩師であろうと、

手を抜くことはなく、追求していく強さは読者を裏切らない。

 

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高齢者を相手に、高額な健康食品を売りつける

「ご長寿研究所」の店長が殺される。

 

いったんは、指名手配中の男が目撃され、容疑者とされるが、

エンマ様の「捜査のカン」が違和感を知らせる。

 

捜査が進むうち、エンマ様の恩師、占部も「ご長寿研究所」に

通っていたことが判明する…。

 

 

中山七里さんの「能面検事」を読む。

 

能面検事

能面検事

 

 

 

一ミリたりとも表情筋が動かない、感情を表出することはない、

上司だろうが、そのまた、上だろうが、

どんな相手に対しても、態度を変えることはない。

KY、どころではない。

 

大阪地検の一級検事、不破俊太郎が主人公。

 

無理難題を言われようが、従えなければ、

涼しい顔をして、「ノー」と言う。もちろん、仕事は一流。

そのため、「能面検事」と呼ばれ、畏怖されている。

 

ただの堅物ではない、

融通が利かない、どころでもない。

 

読み始めは、主人公でありながら、感情の揺れ動きが見えず、

感情移入が難しかった。

だが、この男、ここまで来ると、かえって興味深い。

 

生まれ落ちた時から、「能面」だったわけではなさそうで、

こうした人物が作り上げられるきっかけとなった事件は、

後ろの方で明かされる。

 

不破検事と事務官の惣領美晴は、世間を騒がした

西成ストーカー事件を担当する。

 

この事件は、アパートの一室で、女性と男性の刺殺死体が発見され、

警察の捜査で、女性は須磨菜摘、男性は彼女の同棲相手、

楠葉峰隆と判明する。

 

捜査が進むうち、須磨はストーカーされていたことが分かり、

そのストーカー相手、谷田貝が容疑者として浮かび上がる。

だが、谷田貝からの自供が取れないまま、送検されてきたのだ。

 

不破が谷田貝の捜査を見直すさなか、

所轄に保管されているはずの捜査資料や証拠物件が

無くなっていることに気づく。

 

それをきっかけにして、大阪府警を巻き込んだ、

捜査資料紛失、隠蔽スキャンダルが明らかにされていく。

 

隠蔽に関与した、各所轄の署長以下、

総勢九十七人が処分されるという一大騒動に発展、

そのきっかけを作り、不祥事を暴いた不破は、

大阪府警の全警察官を敵に回すことになる…。

 

とにかく、不破は、上の人間に脅されようと、

なだめすかされようと、顔色一つ変えず、淡々と自分の仕事を進めていく。

 

「自分の流儀に反することはしない」。

それだけの理由で。

 

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人間はブレるものだと思う。

 

壁にぶち当たり、軌道修正していく。

ひょっとしたら、それまでの想いとは全く逆の考えに

至るかもしれない。

それが、人間の面白味を倍加する。

 

だが、不破のように、徹底して、最後まで、

まったくブレないという人間も、面白いものだと思わされた。

 

ただ、傍にいる事務官の美晴。

名探偵によりそうワトソン役としては、まったくの役不足だ。

実に、うるさい。

 

次があるとしたら、少しは、成長した姿を見せてもらえるのだろうか。

香納諒一さんの「新宿花園裏交番 坂下巡査」を読む。

 

新宿花園裏交番 坂下巡査

新宿花園裏交番 坂下巡査

 

 

 

新宿花園神社の裏にある交番、通称「花園裏交番」に勤務する

坂下巡査、二十七歳の四季が描かれる。

 

場所が場所だけに、事件のネタはそこかしこに

転がっているように見える。

 

だが、刑事ではない、交番勤務の警官が、

どう、事件に関わっていくのか。

 

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新宿の交番という舞台は決して悪くはないのだが、

少々、中途半端感があるような。

 

ただ、登場人物は誰もが魅力的ではある。

 

特に、ビッグ・ママと恐れられる、新宿署捜査一課の警部補、

深町しのぶ。そして、ヤクザとなって、坂下の前に姿を現した、

高校時代の野球部の監督、西沖。

 

この二人の人間像ははっきりしており、すっと、

心に入ってくる。

 

それに比べ、坂下は、輪郭がどことなくぼんやりしている。

主人公とはいえ、どこまでも傍観者のような気がする。

 

その立場が、読者であるワタシたちも、物語に入り込み、

主人公の傍らでその息遣いを感じられず、単なる

傍観者のままで終わってしまう理由なのか。

 

坂下は、警官になる前、サラリーマンだったというが、

警官になった理由も、西沖がヤクザにまで身を持ち崩した理由も、

明かされていない。

 

次があるということか…。

 

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