唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

2018-01-01から1年間の記事一覧

宮部みゆきさんの「この世の春 上下」を読む。

この作品は、一編の壮大な冒険物語である。 大きな謎を解くために、石野織部、各務多紀、 田島半十郎、白田医師らが一つのチームとなり、 励まし、助け合う。 「闇を覗き込むと、闇に見つめ返される」という。 闇を直視してはいけない。 だが、この者たちは…

中山七里さんの「翼がなくても」を読む。

ストーリー展開は、やはり、流石だと思わされる。 だが、ひとつ、乗ってこない。 絶望と希望に翻弄される主人公の心のありようは、 ジェットコースターなみに、天から地へ、 地から天へ、だろうが、 どうしても、主人公に心が寄りそっていかない。 アスリー…

吉永南央さんの「花ひいらぎの街角」を読む。

小蔵屋のお草さんと、周囲の人々との 温かかったり、ちょっと苦かったりする交流を描いた 「紅雲町シリーズ」も六作目。 流れるような文章が心地よい。 リズミカルでありながら、急ぎすぎない。 お草さんの足取りに合わせるような。 一話一話、一字一句、大…

香納諒一さんの「刑事群像」を読む。

大河内、渡辺、石嶺といった刑事たちの活躍が 楽しみな捜査一課強行班七係「小林班」シリーズも三作目。 今回は、同じ捜一の中本班との合同捜査となる。 小林班のデカ長、大河内と中本班のデカ長、庄野との 連係プレーは読みごたえがある。 ただ、圧倒的迫力…

大沢在昌さんの「雨の狩人」を読む。

「北の狩人」「砂の狩人」「黒の狩人」と 生き残ってきた新宿署組対課刑事の佐江。 いつも、誰かの死を見届けてきた。 やはり、狩人シリーズの主役は佐江なのだ。 自らを「クソ刑事」と言いながら、 決してブレることなく、誰からの威しに屈せず、 悪い奴に…

柴田よしきさんの「青光の街(ブルーライト・タウン)」を読む。

ブルーライト探偵社本営業所の所長、草壁ユナは 雇われ所長である。 本業は作家。 この探偵社の所長だった高橋信三は、かつて草壁の担当編集者だった。 アレコレあって、高橋は出版社勤めを辞め、 探偵社を立ち上げた。 草壁は、体を壊した高橋から自分の後…

香納諒一さんの「完全犯罪の死角 刑事花房京子」を読む。

事実を一つ一つ丹念に確かめ、推理を構築し、 そしてまた、確かめる。 刑事は「ニコイチ」が原則だが、 彼女は一人で、粘り強く関係者の聞き込みに回り、 徐々に真実へと近づいていく。 それは、犯人にとっては、不安を増幅する崩壊への足音のようだ。 花房…

長沢樹さんの「月夜に溺れる」を読む。

なかなか面白いキャラ設定。 神奈川県警生活安全部に所属する真下は優秀な女刑事だが、 恋愛体質であるところが玉に瑕。 バツ二。相手はどちらも同じ警察官で、 それぞれとの間に一人ずつ子供がいる。 現在は、二度目の結婚でできた娘を引き取り、 子育て中…

大倉崇裕さんの「死神刑事」を読む。

異色の刑事がまた一人誕生した。 この作家さんが生み出した人気キャラの福家警部補とは、 別次元のキャラというか…。 似ているとすれば、 それは「何もかもお見通し」というところだ。 福家警部補にロックオンされたら、 どんな犯人も逃げ切ることは不可能。…

大沢在昌さんの「黒の狩人」を読む。

「北の狩人」、「砂の狩人」ときて、 今回の狩人は、前二作で脇役として主役の魅力を 存分に引き出していた新宿署組織犯罪対策課警部補の佐江だ。 中国人のバラバラ死体が千葉や埼玉で見つかる。 さらに、バラバラではないが、車のトランクに詰められた 中国…

中山七里さんの「連続殺人鬼カエル男ふたたび」を読む。

タイトルからも明らかなように、 あの、カエル男の恐怖が再現する。 「爆ぜる」、「溶かす」、「轢く」、 「破砕する」と、始めから終わりまで、 おぞましい殺戮がノンストップで続くから、 もう、ページを繰る手を止められない。 それこそ、ノンストップで…

宮部みゆきさんの「あやかし草紙 三島屋変調百物語」を読む。

「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」のこの物語も はや、五作目。 第一話の「開けずの間」から 第五話の「金目の猫」まで、 いずれも心に深く染み入って、 奥深いところにストンと収まる、 傑作ぞろいだ。 人の恨みや嫉み、妬みがあやかしとなって、 一家を…

香納諒一さんの「蒼ざめた眠り」を読む。

ハードボイルドだからといって、 いつもいつも、スリルやサスペンスがなきゃダメというわけではない。 ストーリーは静かに展開していっても、 登場人物の生き様が切なかったり、 心に深くしみ込んでいったりと、 そんなハードボイルドもアリだろう。 どうも…

大沢在昌さんの「天使の牙(上下)」を読む。

ボリュームは多いが、相変わらずスピード感のある ストーリー展開で、読むスピードも落ちない。 脳移植を受けた後の「アスカ」より、 河野明日香に魅力を感じるから、 明日香を返して!と叫びたいところなのだが…。 脳が死んだ体(神崎はつみ)に、脳だけが…

小路幸也さんの「スローバラード」を読む。

<弓島珈琲>シリーズ。 「モーニング」から始まるダイとその仲間の物語、 というなら、4作目か。 大学時代の仲間が年を重ね、 家族を作り、そして、人生の折り返し地点を過ぎる。 変わらないものと、変わっていくもの。 年を重ねてバラバラになっても、 ダ…

森晶麿さんの「そして、何も残らない」を読む。

<アガサ・クリスティー賞作家が放つ 現代版「そして誰もいなくなった」。>の キャッチフレーズ。 その心づもりで読んだが、 登場人物になかなか共感しずらく、 ストーリー展開も上滑りし、 結末にも、「ン?」という感じで…。 この作家さん、好きなんだけ…

麻見和史さんの「永久囚人 警視庁文書捜査官」を読む。

同シリーズは、この作品が初読み。 文字、文章、小説などを分析し、 謎を解明していく捜査官。 活字中毒者にとっては、なかなか、興味深い設定だ。 ただ、もう少し、登場人物がキャラ立ちしても いいんじゃないか。 探偵役の鳴海も、チームメンバーの矢代も…

長岡弘樹さんの「赤い刻印」を読む。

人間の繊細な心の動き、哀しみ、憂い、 怒り、驚き、怯えが細やかに描き出されている。 この作家さんの短編には、いつも、唸らされる。 いつのまにか、思いがけない結末に導かれ、 それでも、違和感はなく、納得してしまう。 「傍聞き」に登場した母娘が再び…

近藤史恵さんの「わたしの本の空白は」を読む。

ある意味、恐ろしい物語だ。 目覚めると、そこは見知らぬ病室。 主人公、三笠南は、記憶をなくしていた。 そして、夫だという男が病室を訪れる。 夫に連れられて戻った家では、義母、義姉が、 思わせぶりな態度をとる。 誰も信じられないなかで、妹の存在だ…

小路幸也さんの「花咲小路三丁目のナイト」を読む。

「花咲小路商店街」シリーズも4作目。 一作一作、登場人物が増え、 かなりの人数になるのは、 「東京バンドワゴン」シリーズと同じ。 悪意や冷笑、皮肉は一つもない。 その影もなく、 一点の曇りもない青空を見てるような気にさせてくれる。 良い子、良い大…

太田忠司さんの「万屋大悟のマシュマロな事件簿」を読む。

親バカな、警備会社の社長が主人公。 愛する娘を守るため、さまざまな事件に対峙する。 「鬼の万屋」と異名をとった、凄腕SPだった彼は、 ある出来事をきっかけに、退職。 民間警備会社を立ち上げる。 「金曜22時テレビドラマ化未決定!?」の フレーズがウ…

翔田寛さんの「冤罪犯」を読む。

船橋署捜一巡査部長、香山を中心に、 三宅、増岡の刑事コンビ、 入江係長…。 刑事、一人一人が主人公、 そんな警察小説である。 曲者ぞろいだが、気合が入った刑事の物語は、 読み進めば進むほど、深く深く引き込まれていく。 警察のメンツよりも、上層部の…

大沢在昌さんの「夜明けまで眠らない」を読む。

元傭兵、今はタクシードライバー。 このギャップが、ああ、この作家さんのハードボイルドだ~と ワクワクする。 戦場という非日常の世界と、 日本の都会という日常の世界。 二度とむこうには戻らないと思った男が 二つの世界の境界線を越えるとき、そこには …

香納諒一さんの「幸」を読む。

所轄、海坂署に誕生した、少々風変わりなコンビ。 中年刑事、寺沢の新しい相棒となったのは、 本店捜一から異動してきた一ノ瀬明子。 彼女は、シングルマザーにならんとする 妊娠八か月の妊婦だった。 これまでにない刑事コンビの誕生に、 期待感が膨らむ。 …

曽根圭介さんの「TATSUMAKI 特命捜査対策室7係」を読む。

トンデモな女刑事と新米男性刑事コンビものは かなり目にする。 女刑事が傍若無人に突っ走り、 めちゃめちゃにひっかきまわす。 その傍若無人ぶりの犠牲になるのは、 いつも、コンビを組まされる新米刑事だ。 この作品は、未解決事件を洗いなおす 特命対策室…

香納諒一さんの「第四の闇」を読む。

男くさいハードボイルドとは、少々、雰囲気が異なる。 始まりから、主人公に心がそっていかない。 インターネット心中で妻を亡くした男が 酒におぼれたあげく、アル中になる。 それはそれで、うなずけるのだが、 結末まで、アルコールの中から、闇の中から …

佐々木譲さんの「犬の掟」を読む。

二組の刑事コンビが、別々の角度から一つの事件を追いかける。 徐々に集束してはいくのだが、 物語開始からしばらくはバラバラ感が気になる。 謎の輪郭がボンヤリし、どこを目指しているのか、 きょろきょろ、ウロウロしてしまった。 二組の刑事コンビが同じ…

森水麿さんの「葬偽屋に涙はいらない」を読む。

「葬偽屋は弔わない」の続編。 自分の死後の周囲の反応が見たい。 そんな望みをかなえるため、 偽の葬儀をアレンジする「葬儀屋」、 殺生歩武(せっしょうあゆむ)、黒村、 そして、歩武に拾われたセレナ。 個性的な面々が、今回も、 さまざまな「死」を演出…

中山七里さんの「ヒポクラテスの憂鬱」を読む。

「ヒポクラテスの誓い」の続編。 偏屈で扱いづらい、だが誰もが認める 天才法医学者の光崎藤次郎、 解剖大好きの変人、キャシー、 熱くてまっすぐな刑事、古手川、そして、 新米助教の栂野真琴。 このいつものメンバーが、死体が絡む 6つの難題に挑む。 死者…

あさのあつこさんの「花を呑む」を読む。

抜き身の剣呑さを懐に飲むふたりの男。 一人は、北定町廻り同心、木暮信次郎。 そして、もう一人は、かつて、人を斬る暗殺者であった 遠野屋清之介。 あまりに違い、あまりに似た、この二人の因縁は、 いつまで続くのだろうか。 二人が対峙する場面は、いつ…