中山七里さんの「ヒポクラテスの憂鬱」を読む。
「ヒポクラテスの誓い」の続編。
偏屈で扱いづらい、だが誰もが認める
天才法医学者の光崎藤次郎、
解剖大好きの変人、キャシー、
熱くてまっすぐな刑事、古手川、そして、
新米助教の栂野真琴。
このいつものメンバーが、死体が絡む
6つの難題に挑む。
死者の声を聞く。
「死」は「死」なのだが、
死に至るまでの事実を読み解くことができるのは、
法医学者だけ。
死体を解剖すればするほど予算は減り、
赤字になる。
法医学が置かれた厳しい状況にあっても、
真実を追い求める者たち。
刑事、そして法医学者の最強タッグが、
もう、何も語ることができない死者に代わって
真実を語る。
何も語れない、ということは、不条理な「偽」の事実を
押し付けられても反論ができないということ。
時には、大きな障害の前に、
膝をついてしまうこともあるが、
それでも、
「ヒポクラテスの誓い」の文言、
「能力と判断の及ぶ限り、患者の利益になることを考え」
(この「患者」には死者も含まれる)を守り、
「すべては患者のため」、メスをふるう。
そんな彼らのチームワークの強さを
目にするのが楽しみなのである。
埼玉県警のホームページに、
<コレクター>と名乗る人物から、
「全ての死に解剖が行われないのは、わたしにとって
好都合である…」という書き込みがあった。
その後、アイドルの少女がステージから転落し、死亡する。
それは、事故死として処理されていた。
さらに、<コレクター>の書き込みは続く…。
全ての自殺や事故死に、問題はなかったのだろうか。
<コレクター>の書き込み以来、
警察はひっかきまわされる。
今回は、古手川の上司、渡瀬警部の登場場面が多く、
渡瀬警部ファンのワタシにとって、
実にワクワクする作品だった。