「ごぶさたぁ~、元気だったぁ?」。変わらぬ町、変わらぬ家族の風景がまた、戻って来た。小路幸也さんの「ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴン」を読む。
「東京バンドワゴン」シリーズの十七作目。
これくらい続くと、大きな変化が無くても、
取り立てて事件が起こらなくても、
読めてしまう。
息の長いシリーズの強みか。
このシリーズに触れると、
昭和の香り、いや、それよりもずっと前の香りさえ感じる。
家や町のたたずまいばかりでなく、
この家族の、筋を通す生き方、暮らし方が、
昭和生まれには、原風景を見せてもらっているような気になる。
懐かしく、そして切ない。
季節ごとの行事がきちんと描かれていくのも、
楽しいし、嬉しい。
師走、正月、節分…、
父母や祖父母の居た風景が蘇る。
相変わらず、悪意のかけらも見当たらない。
初期の頃は、多少の悪意がもたらした事件なども
あったような気がするが…。
ぬるい、と言ってしまえばそれまでで、
このぬるさは安心で、とっぷり首までつかりたい。
変わらないと言っても、小さな変化はあるようで。
次の作品では、藍子、マードック夫婦が帰ってきているかもしれない。
彼らが戻って、また、元の家族の物語が始まるのだろう。
楽しみだ。