江戸庶民の暮らしを支える火消。「一人も死なせるな」、ぼろを纏った男たちの物語が熱い。今村翔吾さんの「羽州ぼろ鳶組」シリーズを読む。
今、はまりつつある物語がある。
これまで楽しんだ時代小説も、捕物一辺倒だったが、
江戸の火消し、このシリーズは面白い。
これまでは、捕物帳の中に登場する町火消くらいしか知らなかったが、
武家火消というものが新鮮で、これほどワクワクする世界に
これまで触れてこなかったのが、惜しいくらい。
人の生き方、男の生きざま。
武骨だが、真っ正直で、真正面からぶつかっていく、
その熱い心が直で伝わってくる。
男くさい、男ばかりの物語の中に、
加賀鳶の娘や、火災に巻き込まれたお七、
そして、主人公である、「ぼろ鳶組」の頭、
松永源吾の妻、深雪といった女性が、色を添える。
特に、深雪のキャラは、実にいい。
誰もが、惚れ込む、主人公以上の働きだ。
もちろん、源吾を始めとする、ぼろ鳶組の仲間たちのキャラも秀逸。
一人ひとり個性が際立ち、もはや誰一人欠けても、作品は成立しない。
シリーズの作品はかなり出ているので、
当分、楽しめそうだ。