唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

2018-01-01から1年間の記事一覧

宮部みゆきさんの「三鬼 三島屋変調百物語四之続」を読む。

宮部みゆきさんの時代小説で活躍する女の子たちが好きだ。 おきゃんで、気が強く、ちょっとやそっとではへこたれない。 だが、心優しい彼女たち。 中でも、「ガンバレ」と応援に力が入ってしまうのが 「霊験お初捕物控」シリーズのお初。 賢くて、かわいくて…

中山七里さんの「ネメシスの使者」を読む。

クセ者、渡瀬警部、そして岬検事が登場する。 これまで、さまざまな社会問題をテーマに扱ってきた 作家さんの作品で、今回は死刑制度。 死刑を逃れた凶悪犯の家族が惨殺される。 殺害方法は、その凶悪犯がかつて起こした事件を 踏襲したものだった。 現場に…

大山淳子さんの「原之内菊子の憂鬱なインタビュー」を読む。

なで肩で、お尻のどっしりしたオバサン体型。 おたふく顔の原之内菊子。 だが、彼女には、特別な才能があった。 彼女の顔を見るやいなや、人は自分のことを しゃべりたくて、しゃべりたくて仕方なくなるのだ。 悩み、グチ、何もかも…。 そのために彼女はトラ…

日明恩さんの「ギフト」を読む。

レンタルビデオ店の店員、須賀原は、 ある棚の前に立ち一点を見つめる少年に目を留める。 彼は毎日のように来ては、棚に置かれたDVD、 映画「シックスセンス」を見つめ、そして、 静かに涙を流していた。 須賀原はある日、街でその少年をみかける。 彼は、横…

高橋由太さんの「都会のエデン 天才刑事姉崎サリオ」を読む。

異形の警察官、姉崎サリオ。 「四十過ぎで、身長百八十センチ、体重百四十キロは あると思われる相撲取りのような身体つき」の男。 そして、黒髪をおだんごにし、黒いワンピースを 身に付け、オネエ言葉を使う。と、くれば、 誰もが、あの超有名芸能人を思い…

東直己さんの「半端者」を読む。

呑んだくれの「ごく潰し」。 ススキノを、はしご酒しながら、スイスイと泳いでいく。 ススキノの便利屋探偵<俺>の若き日の物語だ。 北大生の<俺>だが、その後の<俺>は、 この頃と殆ど変わらない。 高田や、周囲の飲み屋との付き合い方にも 変化はない…

内藤了さんの「サークル 猟奇犯罪捜査斑・厚田巌夫」を読む。

凄惨な現場に臨場する厚田刑事。 そして、彼と夫婦となった石上妙子の若き日の物語である。 警察官一家、夫婦と子供二人が刺殺されたあげく、 全員の心臓がくりぬかれる。 放射状に並べられた遺体の頭の上にそれぞれの心臓を置くという 通称、「魔法円殺人事…

伊岡瞬さんの「145gの孤独」を読む。

日常にポロッ、ポロッと落ちている悲しみを 柔らかな布でくるむように拾い上げ描写する。 4つの連作短編。 ピッチャーとして輝いていたスター選手、倉沢修介は、 ある打席で死球を与え、相手の選手生命を奪った。 と同時に、立ち直るきっかけをつかめず、 自…

若竹七海さんの「さよならの手口」を読む。

探偵を休業し、ミステリ小説専門の古本屋でバイト中の葉村は、 古本を引き取りに民家を訪れる。 押し入れにあった本を物色しようと体を突っ込んだとたん、 床を踏み抜き転がり落ちる。 転がり落ちた先には、なんと、白骨遺体があった。 白骨に頭突き、なんて…

大沢在昌さんの「北の狩人」を読む。

北の国から新宿に一人の男がやってきた。 彼は、十年以上も前につぶれた暴力団、「田代組」のことを 聞きまわっている。 その男が動き回るにつれ、新宿の闇社会にさざ波が立ち、 やがて大きなうねりとなって、男たちを巻き込んでいく。 「狩人」シリーズの第…

若竹七海さんの「錆びた滑車」を読む。

<葉村晶>シリーズ、待望の新刊。日本一不運で、同じくらいタフな女探偵の物語。さて、今回は、どんな不運に見舞われるのか…。 で、やはり、のっけから不運をひっかぶり、 ああ、いつもの葉村シリーズだと、妙に安心してしまった。 ホント、裏切られない。 …

伊岡瞬さんの「瑠璃の雫」を読む。

父は失踪。母はアル中。幼い弟に殺意を抱く小学生の美緒。過去に娘を誘拐され、未解決のまま年を重ねた元検事、永瀬。心に大きな傷を抱える二人が出会う。 父親は家族を捨て失踪。 母親はアル中で入退院を繰り返す。 幼い弟、充と、小学六年生の杉原美緒の唯…

椙本孝思さんの「ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係」を読む。

ひねりのある仕掛けに、確かに、驚いた。 マンションの一室で中年男性のバラバラ死体が発見される。 胴体の下には大きな皿が置かれ、 ご丁寧にフォークとナイフまで用意されている。 さらに、頭部は電子レンジで「調理」されていた…。 (と、のっけから、グ…

大沢在昌さんの「砂の狩人」を読む。

相変わらず、男くささがムンムン漂ってくる作品だ。 ハードボイルドとは、冷たく乾いた生き様の物語と思いきや、 男たちが熱い思いを十分に見せつけ、 ずいぶん、ナニワ節じゃ、ないか。 昔、少年犯罪者を射殺したことで警察をやめ、千葉の漁師町に引っ込ん…

川瀬七緒さんの「紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官」を読む。

明るくて何事にもめげない、超元気印、 赤堀涼子の真っ黒な負の部分、いや核が初めて語られる。 今回は、前作までと環境が変化した。 これまでの実績が認められ(?)、 赤堀は警察の非正規雇用となり、 捜査分析支援センターという部署に属する。 そこには…

香納諒一さんの「無縁旅人」を読む。

『刑事さん、孤独って何だかわかりますか。それは、ひとりっきりで話す相手がいないことじゃありません。自分が、誰か自分以外の人のために、何かして上げられる存在ではないと思い知ること』 人がたくさん集まる都会。 周りを多くの人が行きかい、喧騒にあ…

太田忠司さんの「歪んだ素描 探偵藤森涼子の事件簿」を読む。

「求む、バカな人」。 OLだった女性が、ある奇妙な求人広告をきっかけに、 探偵という仕事を稼業にして、時には深く、 時には傍観者となって、他人の人生に関わっていく。 女探偵、藤森涼子シリーズが誕生した1作目である。 彼女が取り組む4つの依頼を描いた…

濱嘉之さんの「ヒトイチ 警視庁人事一課観察係」を読む。

「警察の警察」、汚いマネをする者は、仲間だとて許さない。徹底した捜査で対象者を丸裸にする。 警察組織の膿を出す、「警察の警察」、人事第一課監察係、 通称「ヒトイチ」の物語で、3編の連作短編。 内部告発や、捜査情報の漏洩が疑われる事件などから 警…

香納諒一さんの「贄の夜会」を読む。

実に重厚な作品だ。 登場する刑事たちは、根っからの刑事で、 職人だ。 ひとりひとりが捜査技術にたけ、その腕にプライドを持ち、 手の内を容易には明かさない。 そのプライドと、そして粘りの先に犯人の後ろ姿が見えてくる。 「犯罪被害者家族の集い」に参…

大倉崇裕さんの「警視庁いきものがかり クジャクを愛した容疑者」を読む。

オッサン刑事(現在は刑事ではないが)と 女性警官とのコンビ。 先日読み終えた「噂」と違って、こちらの女性警官は少々オトボケだ。 この作品は、警視庁いきもの係シリーズの4作目。 二人のコンビぶりには磨きがかかり、薄の日本語能力の迷走ぶりは 一段と…

吉永南央さんの「キッズタクシー」を読む。

正当防衛で人を殺してしまった女に、その街はやさしかった…。 木島千春は、AYタクシーに勤務するタクシードライバー。 AYタクシーは、一般業務の他に、子どもの塾や習い事の送り迎えができない 親に代わって送迎する、キッズタクシーを提供している。 千春は…

深町秋生さんの「ドッグ・メーカー 警視庁人事一課観察係 黒滝誠治」を読む。

腐った警察組織にケンカを売る男、黒滝。美しき上司とともに、悪をもって悪を封じる。 悪とは、正義とは、なんて、考える余裕を与えないほど、 ワルがグイグイ迫ってくる。 凄い迫力である。 「警察の警察」と呼ばれる監察の物語。 そうすると、警察内部の不…

樋口有介さんの「猿の悲しみ」を読む。

汚れていようが仕事は仕事。どんなに深い闇を目の当たりにしようと、愛する息子のため。風町サエは、腹式呼吸をして、やり過ごす。 風町サエシリーズの1作目。 続編の「遠い国からきた少年」から先に読んでしまったのだが、 どちらも読みごたえは十分。 殺人…

藤崎翔さんの「神様の裏の顔」を読む。

スッキリ決着、ほっこり結末をお望みの方にはお勧めしませんが、どんでん返し、大いなる騙しにニヤッとできる方にはおススメです! いい人→裏の顔という図式はよくある話だが、 ひねりがあって、予測はつかなかった。 実はこの作品、一度放り投げている。 登…

呉勝浩さんの「蜃気楼の犬」を読む。

「事実をかき集めろ。その上で、すべてを疑え。あらゆる可能性を検討しろ。口に出せ。恥をかけ。事件の解決にお前の苦労も不名誉も関係ない。それが刑事だ。」 やる気も正義感も、少々くたびれてきた、 県警捜査一課のオッサン刑事、番場。 だが、事件現場に…

樋口有介さんの「遠い国からきた少年」を読む。

法律事務所で働くシングルマザー。彼女の仕事は「調査員のようなもの」。裏の汚れ仕事を一手に引き受け、ムエタイを武器に突き進む。 「猿の悲しみ」の続編。 ここに登場する人物たちは、いずれもしたたかで、 クセが強く、あまり可愛げはない。 だが、ワル…

東直己さんの「消えた少年」を読む。

ススキノの<探偵>シリーズの魅力は、もう語るところがないほど 語りつくされている。 <探偵>と言ってはいるが、私立探偵でもなんでもない。 うさんくさいモメごとやトラブルを、依頼があれば片付ける 便利屋のようなものだ(その中には麻の葉っぱを売る…

内藤了さんの「犬神の杜 よろず建物因縁帳」を読む。

人の妬み、そねみ、羨みが瘴気となって憑く。今回、曳く「モノ」は建物ではなく…。 今回の舞台は、嘉見帰来(カミキライ)の山を通す風切トンネルの工事現場。 その現場を仕切る建設会社、橘高組で働く女性二人が 相次いで不審死をとげる。 その遺体には無数…

呉勝浩さんの「道徳の時間」を読む。

「道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?」 かつて、世間から注目されたビデオジャーナリストの伏見。 彼が住む鴨川市で、悪質なイタズラが連続で起きる。 それぞれの傍らには、「生物の時間を始めます」、「体育の時間を始めます」という 謎のメッセージ…

内藤了さんの「憑き御寮 よろず建物因縁帳」を読む。

あの世とこの世の間(マ)で命を張る、仙龍、春菜、コーイチ、和尚、教授。再び登場! 今回の悪しき因縁は、おぞましき女の執念。 また、春奈の天敵、長坂が余計なことをしてくれるのだが、 近頃は、春菜も決して負けてはいない。 長坂がやり込められる場面…