樋口有介さんの「遠い国からきた少年」を読む。
法律事務所で働くシングルマザー。彼女の仕事は「調査員のようなもの」。裏の汚れ仕事を一手に引き受け、ムエタイを武器に突き進む。
「猿の悲しみ」の続編。
ここに登場する人物たちは、いずれもしたたかで、
クセが強く、あまり可愛げはない。
だが、ワルとしての魅力はプンプンと匂ってくる。
正義なんてクソくらえ。欲のオンパレードなんだが、
それが実にさっぱりしていて、いっそ清々しい。
ワルにはワルの事情があり、
正義には少々、引っ込んでもらおうか。
メインキャラの風町サエは、羽田法律事務所の
「調査員のようなもの」。
十六歳で人を殺し、少年院から女子刑務所で服役した後、
所長の羽田に弁護を担当してもらった縁で、
この事務所に雇われた。
彼女の担当は、借金の回収、脅しなど、
裏の汚れ仕事。
子どもの頃に身に付けたムエタイを駆使して、
大立ち回りも辞さない。
服役中に出産した息子は高校生となり、
シングルマザーとして奮闘中。
と、なかなかハードな人生を送っている。
事務所には、新米弁護士の島袋(この男は幾分まとも?)、
そして、八十を過ぎたと見える老女、雪原玲香が
事務員として勤めている。
彼女は、羽田の父親の愛人だったらしい、
というのだから、キャラの濃いメンバーがそろっている。
さて、今回は、芸能界で顔役でもあり、アイドル育成のピザ店で
成功をおさめた男が依頼人。
ピザ店でアルバイトをしていた少女が自殺し、
その両親から1億2千万の賠償金を要求されているという。
その額を何とかして下げてもらいたいというのが
依頼内容。
自殺した少女の家族を探るうち、事態はとんでもない方向に…。