事件の核は、あまりにも、切なく虚しい…。中山七里さんの「護られなかった者たちへ」を読む。
「護られなかった者たちへ」。
このタイトルが、全てを物語る。
法からも、社会の枠組みからも、
護られることなく、ぽろぽろとこぼれていく人々。
生活保護の不正受給が糾弾される中、
本当に困窮している人々からの申請は
次々に却下されていく。
誰もが、これではいけない、何とかならないのか、
そう思いはするだろうが、こぼれていった人が、
救いあげられることはない。
仙台市の保健福祉事務所課長が、手足を縛られた状態で
餓死しているのが発見される。
怨恨殺人として捜査が進められるが、
被害者は善人、清廉潔白だという評判で、
恨まれるわけがないという声しか聞こえてこない。
そんな時、今度は、県会議員が同じような餓死死体で
発見された。
被害者二人に共通するものは…。
物語の半ばで、容疑者の姿が浮かび上がってくる。
そのあたりから、事件の動機が描写されていく。
その辺で、結末が読めてしまったのは残念だが、
重要なのは、事件の核であり、背景だ。
犯人を追う刑事コンビは、あくまでも傍観者である。
主人公にはなりえない。
主人公はやはり、「護られなかった者たち」。
今日、護られる、護られている人も、
明日は、護られない側に回るかもしれない。
それほど、現代社会は脆く、危うい。
事件が起こらざるを得なかった背景、そして結末は、
重みがあり、切なく、そして、むなしい…。