唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

加害者家族は、生きていてはいけないのでしょうか。その血は、断たれなければならないのか。吉川英梨さんの「ブラッド・ロンダリング」を読む。

 

ブラッド・ロンダリング

ブラッド・ロンダリング

  • 作者:吉川英梨
  • 発売日: 2020/03/26
  • メディア: 単行本
 

 

 

事件の被害者家族、そして、加害者家族。

どちらも大きな傷を負い、それによって、人生を台無しにされる。

その傷み、苦しみは、同じようで違い、違うようで同じだ。

 

だが、もちろん、その二つが共感しあうことはない。

 

読んでいるこちらも、息が詰まるほど、苦しく、切ない。

 

被害者家族であれ、加害者家族であれ、

事件に巻き込まれた者たちは、

運命を呪うしかないのだろうか。

救われる道は、どこかにあるのだろうか。

 

そして、血は引き継がれるのだろうか。

 

どこかで、断たなければならない血とは、何か。

 

警視庁捜査一課の女刑事、汐里は、「昭和の男」と呼ばれ、

独特の存在感を放つ。婚約者を殺されたという重い過去を引きずっている。

 

そして、もう一人の主役である、倫太郎。

捜査一課に配属されたばかりの新米刑事だ。

 

物語は、配属された初日、倫太郎が直属の上司に

辞表を渡すところから始まる…。

彼は、過去にまつわる秘密を隠し持っている。

 

そして、その日、管内では、

男性の転落死体が発見される。

その遺体は、駐車場の車に、頭から突き刺さっていた。

 

男性はフリーライターの下地という名で、

スクープに繋がるネタを追っていたと考えられる。

 

汐里らが、下地が追っていたネタを調べていくうち、

一つの村を焼き払ったある放火事件と、その加害者家族に加えられた

惨い仕打ちが浮き彫りになってくる。

 

そして、結末に近づくにつれ、

タイトルの「ブラッド・ロンダリング」の意味が明らかになり、

どうしようもなく、切ない。

 

エピローグ前、汐里が倫太郎に告げた言葉が胸に迫る。

その言葉が、倫太郎を救う。