加害者家族は、生きていてはいけないのでしょうか。その血は、断たれなければならないのか。吉川英梨さんの「ブラッド・ロンダリング」を読む。
事件の被害者家族、そして、加害者家族。
どちらも大きな傷を負い、それによって、人生を台無しにされる。
その傷み、苦しみは、同じようで違い、違うようで同じだ。
だが、もちろん、その二つが共感しあうことはない。
読んでいるこちらも、息が詰まるほど、苦しく、切ない。
被害者家族であれ、加害者家族であれ、
事件に巻き込まれた者たちは、
運命を呪うしかないのだろうか。
救われる道は、どこかにあるのだろうか。
そして、血は引き継がれるのだろうか。
どこかで、断たなければならない血とは、何か。
警視庁捜査一課の女刑事、汐里は、「昭和の男」と呼ばれ、
独特の存在感を放つ。婚約者を殺されたという重い過去を引きずっている。
そして、もう一人の主役である、倫太郎。
捜査一課に配属されたばかりの新米刑事だ。
物語は、配属された初日、倫太郎が直属の上司に
辞表を渡すところから始まる…。
彼は、過去にまつわる秘密を隠し持っている。
そして、その日、管内では、
男性の転落死体が発見される。
その遺体は、駐車場の車に、頭から突き刺さっていた。
男性はフリーライターの下地という名で、
スクープに繋がるネタを追っていたと考えられる。
汐里らが、下地が追っていたネタを調べていくうち、
一つの村を焼き払ったある放火事件と、その加害者家族に加えられた
惨い仕打ちが浮き彫りになってくる。
そして、結末に近づくにつれ、
タイトルの「ブラッド・ロンダリング」の意味が明らかになり、
どうしようもなく、切ない。
エピローグ前、汐里が倫太郎に告げた言葉が胸に迫る。
その言葉が、倫太郎を救う。