唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

高橋由太さんの「都会のエデン 天才刑事姉崎サリオ」を読む。

異形の警察官、姉崎サリオ。

 

「四十過ぎで、身長百八十センチ、体重百四十キロは

あると思われる相撲取りのような身体つき」の男。

そして、黒髪をおだんごにし、黒いワンピースを

身に付け、オネエ言葉を使う。と、くれば、

誰もが、あの超有名芸能人を思い浮かべる。

 

だが、その実体は見た目とかけ離れている。

 

国立大学を卒業。国家公務員採用試験に合格し、

キャリアとして警視庁に入庁した。

 

キャリアではあるが、警察官として優秀で、

抜群の検挙率を誇り、誰もが、彼を

「天才」と呼んだ。

 

だが、地方警察の公安部門に配属されてから、

相棒が殉職する。

 

その事件の後から姉崎は女装し、オネエ言葉を

使い、はぐれ者のキャリアになったのだという。

 

そして現在は、警視庁捜査一課きっての天才刑事ではあるが、

一種独特の存在になった。

 

 

前科持ちの男が、ビルの屋上から突き落とされて死んだ。

目撃者は多く、ほどなく犯人は逮捕される。

 

さらに、被害者、久野学の三歳の息子、和也が

行方不明になる。

 

父親の死に関連があるのか。

 

そして、不審な動きを見せる警備員の峰岸。

彼はかつて、「伝説」と呼ばれた警官だった。

 

捜査一課に配属になったばかりの新米刑事、

緒方孝太郎は、男児行方不明事件の捜査本部に召集される。

 

だが、向かわされたのは姉崎サリオが班長の特捜班。

しかも、部下は孝太郎一人だけだった。

 

その日から、孝太郎は姉崎に振り回されながら、

一課の刑事としてはじめての事件に取り組む…。

 

ギャグっぽさ満載のストーリーだが、

それだけで終わらない。

 

借金、貧困、貧困から生まれる犯罪、

犯罪者家族のインターネット晒し…。

そうした悲劇がまた、新たな犯罪を生む。

 

悲劇の渦に巻き込まれた人々の生き様は、

言葉にならないほど厳しく、切ない。

 

 

都会のエデン: 天才刑事 姉崎サリオ (光文社文庫)

都会のエデン: 天才刑事 姉崎サリオ (光文社文庫)