太田忠司さんの「歪んだ素描 探偵藤森涼子の事件簿」を読む。
「求む、バカな人」。
OLだった女性が、ある奇妙な求人広告をきっかけに、
探偵という仕事を稼業にして、時には深く、
時には傍観者となって、他人の人生に関わっていく。
女探偵、藤森涼子シリーズが誕生した1作目である。
彼女が取り組む4つの依頼を描いた連作短編。
家出した妹や失踪した夫を探すという依頼に向き合う中で、
幾度となく納得できない部分が目に入る。
その部分を見て見ぬふりをして通り過ぎるか、
向き合って突き進むか。
結局、いつも向き合う方を選ぶのだが、
背中を押してくれるのが、「地蔵顔」と藤森が密かに
イメージする一宮所長。
彼の温かいまなざしを受けて、藤森は調査員として成長していく。
日常の何気ない風景。
だが、人によって異なる見方が、事件やもめごとを起こしていく。
そうした依頼に向き合う女探偵を淡々と描いていく文体だからこそ、
気負うことなく、かまえることなく、読み進めていけるのだろう。