唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

濱嘉之さんの「ヒトイチ 警視庁人事一課観察係」を読む。

「警察の警察」、汚いマネをする者は、仲間だとて許さない。徹底した捜査で対象者を丸裸にする。

 

警察組織の膿を出す、「警察の警察」、人事第一課監察係、

通称「ヒトイチ」の物語で、3編の連作短編。


内部告発や、捜査情報の漏洩が疑われる事件などから

警察官の不正が浮かび上がり、

非行警官を追い詰め、丸裸にしていく。


主役の監察係長、榎本は上司も認める優秀な捜査官。

監察は、忌み嫌われる部署というイメージがあるが、

榎本は誰からも好かれ、一目置かれるという人物像で、

アクの強さはあまり感じ取れない。


公安や組対といった部署との連携プレーなんかなさそうだが、

時には協力を得て捜査が行われるのは、

他の監察を扱った作品とは、また一味違う。


警察上層部の非行案件となると、

企業や政治家との結びつきが複雑すぎて、

ピンとこない部分もある。


調査の徹底ぶりはすさまじいものがあるが、

「事件は必ず人と人が繋がって引き起こすものだ。

膨大な資料の中からその接点を見つけ出す作業は

気の遠くなるものだが、接点は必ずあると信念を

持たなければ捜査はできない」という言葉に

集約される。


警察内部を調べるということは、

百戦錬磨の警察官を相手にするということで、

事件捜査とはまた違った緊迫感が、ここにはある。


作家さんの経歴を見ると、

警視庁に入庁してから、警備部警備、

公安部総務、そして内閣官房内閣情報調査室勤務といった

錚々たる経歴の持ち主だった。


情報戦の真っただ中で活躍してきた人だからこその作品だと

あらためて納得できた。

 

 

ヒトイチ 警視庁人事一課監察係 (講談社文庫)

ヒトイチ 警視庁人事一課監察係 (講談社文庫)