大倉崇裕さんの「死神刑事」を読む。
異色の刑事がまた一人誕生した。
この作家さんが生み出した人気キャラの福家警部補とは、
別次元のキャラというか…。
似ているとすれば、
それは「何もかもお見通し」というところだ。
福家警部補にロックオンされたら、
どんな犯人も逃げ切ることは不可能。
そしてまた、「警視庁のほうから」やってくる
儀藤堅忍警部補も、粘り強く真実を追求していく。
ただ、福家警部補が捜査するのは、起きたてホヤホヤの事件だが、
こちらは、犯人を捕らえ起訴するも、裁判で無罪判決が出てしまう事件。
それは、警察にとっては敗北を意味する。
再捜査を行うということは、傷を抉り出すということだ。
儀藤は、再捜査を始めるにあたって、その事件に関わった捜査員を
一人相棒に選ぶ。
儀藤はいうまでもなく、選ばれた相棒も、組織から白い目で見られ、
出世の道は閉ざされる。
ゆえに、儀藤についた呼び名は「死神」。
自己紹介の際に必ず、「警視庁のほうからやって来ました」と
所属先も連絡先も書かれていない名刺を差し出すのだ。
強盗殺人、偽装殺人、痴漢冤罪、誘拐事件と
4つの物語が描かれる。
それぞれの事件で指名された相棒たちは、
噂の「死神」に選ばれたことで、
嫌悪感を抱き、絶望するのだが、
儀藤について捜査を進めるうち、
あるのは者はふっきれ、ある者は救われた思いになる。
それは、事件のちょっとした関係者の心を救ったり、
多少の影響を与える、福家警部補の存在と似通っているのかもしれない。
いずれにしても、まだ、あいまいな部分が多い
儀藤のキャラだから、きっと、シリーズになり、
この先、肉付けされ豊かになっていくことだろう。