大倉崇裕さんの「白虹」を読む。
この作家さんのシリーズものでは、
「福家警部補」や「警視庁いきもの係」、「問題物件」シリーズが
好物だ。
この作品は山岳ミステリー。持っている引き出しの数は多いなぁ
主人公、五木健司は警官だった頃に犯したミスが傷となり、辞職。
その傷はじくじくといつまでもうずき、
その痛みから逃れるように、山小屋でのアルバイト生活を続ける。
と、過去に傷持つ主人公ってのは、どこにでも転がっているような気がする。
ここでも、多くの作品の主人公と同様に、
過去の傷が手かせ、足かせになり、いつまでも前を向けない。
当人はどうであれ、五木の周囲には、多くの人が
彼に手を差し伸べようとする。
それに対して、いつまでもかたくなに心を閉ざす主人公には、
少々イラっともするのだが。
だが、そんな彼が、遭難しかけた男を助けたことにより、
殺人事件に巻き込まれる。
かつては「辞職しなければ、いい刑事になった」とまで
言われていた彼は、事件の真相追求に前のめりになっていく。
事件のすべてが明らかになったとき、
過去の傷は、本当に過去のものになっていく。
再生の物語でよかった…。