「歪み」がキーワード。はるか昔の怨念が、現代社会を歪ませる…。川崎草志さんの「長い腕」を読む。
作品を読み続けられるか否かは、文体の好み、
ストーリー展開のスピード感など、いろいろあるが、
何といっても、登場人物にどこまで共感できるか、
その世界に入り込んでいけるかどうかがカギになる。
この作品は、展開の早さはまあまあだったが、
あるところまで、主人公である、汐路の、
人を寄せ付けない、拒むような独特の雰囲気、
硬さ、ある意味、冷たさが負の感じとなり、
感情移入が難しかった。
それは、彼女の過酷な過去が原因なのかもしれないが。
だが、故郷である早瀬へ戻ってからは、
彼女の硬さや冷たさが、事件を引っ張っていく強さとなり、
だんだん、面白みを感じるようになっていった。
ゲーム制作、殺人、無理心中、旧家、サイコパス、そして過去からの因縁…、
要素が多すぎて、とっちらかっていて、回収しきれないものもあるなと
思っていたら、三部作だと知り、まあ、納得。
汐路が勤めるゲーム制作会社で、同僚二人がビルから転落して死亡する。
その現場を目の当たりにした汐路はショックを受ける。
彼女の幼いころ、両親が転落死していた。
そのころ、故郷の早瀬では、女子中学生が友人を猟銃で射殺するという
事件が起きていた。
この二つの事件には、ある共通項があった。
転落死した汐路の同僚、そして猟銃事件を起こした中学生、
どちらも同じキャラクターグッズを持っていたのだ。
汐路は故郷へ戻り、猟銃事件を調べ始めるうち、
はるか昔に起きた陰惨な事件が浮かび上がってくる。