唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

「歪み」がキーワード。はるか昔の怨念が、現代社会を歪ませる…。川崎草志さんの「長い腕」を読む。

 

長い腕 (角川文庫)

長い腕 (角川文庫)

  • 作者:川崎 草志
  • 発売日: 2012/10/19
  • メディア: Kindle版
 

 

 

作品を読み続けられるか否かは、文体の好み、

ストーリー展開のスピード感など、いろいろあるが、

何といっても、登場人物にどこまで共感できるか、

その世界に入り込んでいけるかどうかがカギになる。

 

この作品は、展開の早さはまあまあだったが、

あるところまで、主人公である、汐路の、

人を寄せ付けない、拒むような独特の雰囲気、

硬さ、ある意味、冷たさが負の感じとなり、

感情移入が難しかった。

 

それは、彼女の過酷な過去が原因なのかもしれないが。

 

だが、故郷である早瀬へ戻ってからは、

彼女の硬さや冷たさが、事件を引っ張っていく強さとなり、

だんだん、面白みを感じるようになっていった。

 

ゲーム制作、殺人、無理心中、旧家、サイコパス、そして過去からの因縁…、

要素が多すぎて、とっちらかっていて、回収しきれないものもあるなと

思っていたら、三部作だと知り、まあ、納得。

 

 

汐路が勤めるゲーム制作会社で、同僚二人がビルから転落して死亡する。

その現場を目の当たりにした汐路はショックを受ける。

彼女の幼いころ、両親が転落死していた。

そのころ、故郷の早瀬では、女子中学生が友人を猟銃で射殺するという

事件が起きていた。

 

この二つの事件には、ある共通項があった。

転落死した汐路の同僚、そして猟銃事件を起こした中学生、

どちらも同じキャラクターグッズを持っていたのだ。

 

汐路は故郷へ戻り、猟銃事件を調べ始めるうち、

はるか昔に起きた陰惨な事件が浮かび上がってくる。