毎日でも通いたくなる、そんな店、「パ・マレ」。そのシェフ、三舟が客に披露するのは料理と、そして謎解きと。近藤史恵さんの「タルト・タタンの夢」を読む。
事件とも呼べない小さな出来事。
でも、そのもつれた糸をほぐすことによって、
人の人生が大きく変化する。
そのきっかけを作るのが、
ビストロ「パ・マル」の三舟シェフ。
下町の商店街の中にある、小さな店。
スタッフは、シェフの他、スーシェフの志村さん、
ソムリエの金子さん、そして語り手でもある
ギャルソンの高築の四人だけ。
七話の短編が収められ、
どの作品も、客が持ち込む何気ない違和感や、
ちょっとしたトラブル、歪みを、
三舟シェフの優れた洞察力や、推理力で、
あるべき方向に、そして形に整えていく。
きっと、三舟シェフが供する、
肩肘張らなくてもいいフランス料理と同じく、
難しい顔をせずに構えずに読める、
そんな、軽く、ゆるやかなミステリーだ。
七話もあるのに、気づけば、いつのまにか
読み終わっている。
軽すぎて、ちょっと物足りなくも感じるが、
腹八分、これが、おいしいものを味わうときの
ルールだろう。
このシリーズ、三作も出ているそうだから、
まだまだ、楽しめそうだ。