唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

元刑事、凄腕ハンター、警察マニアという風変わりなトリオが、異常な謎に挑む。川瀬七緒さんの「二重拘束のアリア 賞金稼ぎスリーサム!」を読む。

 

二重拘束のアリア~賞金稼ぎスリーサム!~

二重拘束のアリア~賞金稼ぎスリーサム!~

  • 作者:川瀬七緒
  • 発売日: 2020/07/30
  • メディア: Kindle版
 

 

 

期待を裏切らない作家さんだと、つくづく思う。

 

元刑事の薮下、大企業の御曹司のクセに警察マニアの淳太郎、

そして、凄腕のハンター、一花。

ちょっと、いや、大分、風変わりなトリオが、

ギクシャクしながらも、謎を解き明かし、犯罪者を追い詰めていく、

「賞金稼ぎスリーサム」の続編。

 

前作で相手にしたのは、国際指名手配を受けているテロリストで、

いうならば、分かりやすい犯罪者だった。

だが、今回の事件は…。

どす黒い異常性が見え隠れしてきて、

鳥肌が立つくらい。

 

明確に表にあらわれない悪意は厄介で、

後から、あれは悪意だったのだとわかると、そら恐ろしい。

 

前回、テロリストを追い詰めた三人は、ルワンダ政府から一億円という

懸賞金を手にし、刑事事件専門調査会社「チーム・トラッカー」を

立ち上げる。

 

三人のつかず離れずの関係は相変わらずだが、

関係の土台となる信頼は、ぐっと強くなっているようだ。

 

今回は、一花のハンターとしての天才ぶりと、

危うく、恐ろしいキャラが色濃く表れていた。

 

人との距離の取り方がわからず、普通の人間関係を築けない一花。

正反対に、どんな相手でも、その懐にスッと入れてしまう淳太郎、

あまりにも特異な性格の二人の間にあって、

バランスの取れた常識人に見えてしまう薮下。

 

だが、淳太郎にしろ、薮下にしろ、

過去に傷を負っている。

 

事件の謎解きと同時に、完璧ではない彼らが、

お互いを思いながら、足りないところをフォローしあう、

三人の関係性も作品の醍醐味なのだろう。

 

この作家さんのもう一つのシリーズ、「法医昆虫学捜査官」シリーズに

登場する岩楯刑事と薮下が、どうしても重なって見えてくる。

 

赤堀に振り回されながらも、彼女を支えていく岩楯刑事との関係性が、

一花に対する薮下にダブルのだ。

 

前作では、テロリストを追い詰めながら、

逃げられてしまう。

そして、今回の結末は…。

 

っていうか、今回は、賞金稼ぎから外れているようなのだが…。

 

三年前の若夫婦が死亡した事件。

警察は捜査の結果、現場に第三者がいた痕跡はなく、

壮絶な殺し合いの末、お互いを死に至らしめた

「無理心中」と結論付けた。

 

その結論に納得のいかない、死亡した妻の両親は、

「チーム・トラッカー」に再調査を依頼する。

 

若夫婦は、なぜ、「殺し合い」をしなければならなかったのか。

「チーム・トラッカー」が始動する。

 

 

「賞金稼ぎ」シリーズももちろん、期待しているが、

「法医昆虫学捜査官」の続編、お待ちしています。