唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

「タフ」、「最強」。どちらも、オンナ探偵、葉村晶の代名詞。「プレゼント」から「静かな炎天」まで読み直す。

 

プレゼント (中公文庫)

プレゼント (中公文庫)

  • 作者:若竹 七海
  • 発売日: 1998/12/01
  • メディア: 文庫
 
さよならの手口 (文春文庫)

さよならの手口 (文春文庫)

  • 作者:若竹 七海
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫
 
悪いうさぎ (文春文庫)

悪いうさぎ (文春文庫)

  • 作者:若竹七海
  • 発売日: 2005/05/20
  • メディア: Kindle版
 
依頼人は死んだ (文春文庫)

依頼人は死んだ (文春文庫)

  • 作者:若竹 七海
  • 発売日: 2003/06/10
  • メディア: 文庫
 
静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

 

 

暗い越流 (光文社文庫)

暗い越流 (光文社文庫)

 

 

 

推理小説、ミステリーを再読する、なんて、

「え~」と思われるだろうが、

もう、おバアサンゆえ、筋立ても犯人も、

まったく忘れているからこそ、何度でも読めてしまうのだ。

 

で、最近、このシリーズがドラマ化され、

シシドカフカさんが葉村を演じていた。

 

このキャラにぴったりの役者さんっている?と思ったが、

びっくりするぐらい、はまっていた。

 

はまっていはいたのだが、原作に比べ、少々、ぬるかった。

原作の葉村は、もっともっと、容赦ない。

 

それで、また、一から読みたくなったのだ。

 

ユーモアでさえも、人を刺し通すような鋭さを持っている。

変な表現だが、それほどの切れ味をもっているということ。

 

媚びない文体。

相手が読者だろうが、突き放す。

それがまた、気持ちいい。

 

そして、何といっても、

人であれ、物であれ、描写が凄い。

たちどころに頭の中で像を結び、

人物なら、生き生きと動き出す。

で、多少の皮肉も混ざっているが、

それがまた、的確で、つい、クスリとしてしまう。

 

例えば、街の廃れかけた美容院を訪れるのだが、

「かぶったとたんに感電死しそうな古いおかまが二台、

(中略)年代物の女主人が手をぶるぶる震わせながら、

テレビを観ていた」(静かな炎天「血の凶作」)。

 

下手な解説などいらない。

感電死しそうなおかまと、手を震わせている女主人の姿が

浮かび上がってくる。

 

実に辛辣な言い回しなのだが、

やっぱり、気持ちいい。

 

 

時系列にすると、

初登場したのが「プレゼント」で、

この頃は、ルームクリーナーや電話相談など、

仕事を渡り歩くフリーターだった。

 

ちなみに、「プレゼント」には八編が収められているが、

あの小林警部補と交代で登場している。

 

「世界一不運な」オンナ探偵として有名になった葉村。

数々の不運に見舞われるのだが、何といっても

「トラブル・メーカー」で、姉に殺されそうになったこと、

これこそ、最大、最悪の不運だろう。

 

葉村って、結構、過酷な生い立ちなのね。

 

作者さんの意地が悪くなったのか、

監禁され、トラウマになったり、白骨に頭突きしたり、

階段から突き落とされて、腐乱死体にしりもちついたり…、

「悪いうさぎ」あたりから、苛められっぷりがエスカレートしていく気がする。

 

不運はケガばかりではない。

 

契約調査員として仕事をもらっていた長谷川探偵事務所が閉業し、

その後、ミステリー専門古書店「MURDER BEAR BOOKSHOP」に

アルバイトとして雇われるのだが、

その店長、富山が、あっけらかんと、理不尽な要求や

無理難題を、葉村に押し付ける。

 

そのたびに、「と~や~ま~、てめ~、なにしてくれてんだーっ」と

口走りながらも、要求に応えていく。

 

さらに、富山ばかりでなく、あちこち走り回った先で、

新たな頼みごとをされ、グチりながらも果たしていく。

(静かな炎天「聖夜プラス1」)

 

葉村って、こんなに、お人好しだったっけ?

 

そんな葉村も、もう四十代。

 

体力は落ち、ケガからの回復も遅くなり、四十肩に苦しみ…。

 

この先、五十になっても、登場人物の理不尽な要求に’応えて、

走り回り続けるのだろうか。

 

それでも、できるだけ、長い間、葉村の活躍を見たい、

そして、容赦のない、冷たい口調で浴びせて欲しいと

切に願うのだ。