皮肉たっぷり、でも、ちょっとユーモラス、若竹ワールドが全開!若竹七海さんの「死んでも治らない 大道寺圭の事件簿」を読む。
初めて読んだのがもう、十年以上前だから、
決して新しい作品ではない。
十年前に読んだとき、どんな感想を持ったのか、
もう、完全に忘れている。
もちろん、作品の内容も。
で、若竹七海さんの作品は、
世界一不運な女探偵、葉村シリーズから入り、
殆どすべて、読んでいる。
この作家さんの、少々、意地悪な見方、
斜に構えた雰囲気、人を突き放すような物言い…、
だからと言って、トゲトゲしているわけじゃない。
クスっとさせられる、シニカルなユーモア、
どれも、全部好きだなぁ。
心がほっこり、っていうのも、もちろんいいけれど、
甘いことなんて一つもない、この世の中で、
口の端っこを片方だけ、釣り上げて笑ってみせるような、
意地悪さが、いいなぁ。
皮肉たっぷりだけど、軽めのストーリーは、
読みやすく、読んだ後、妙に心に引っかかってくる。
それこそ、大人の、コージーミステリーじゃ、ありませんか。
さて、この物語の主人公は、元警察官の大道寺圭。
警官時代に遭遇した、おバカな犯罪者の事件を書いた
ノンフィクション、「死んでも治らない」がまあまあの売れ行きを示した。
その大道寺が、なんだか、バカっぽい犯罪に巻き込まれる
五つの話が描かれる。
バカっぽいとはいえ、殺されかけたり、と、
命の危険にもさらされるのだが、
そこは、何となく、葉村に似ている。
五つの話の合間に、大道寺の警官最後の事件が挟まっている。
その構成にも、意味があるんだろう、けどね。
シリーズ化はなかったんだろうか。
大道寺の過去も知りたかったんだけど。