唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

葉崎に、一人の「悪意」がじわじわと広がり…。いつものように、苦味をともなった極上のミステリー。若竹七海さんの「パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎シリーズ」を読む。

 

 

近頃、年のせいか、登場人物が次々と現れて、

くるくる場面転換していくストーリーが苦手になってきている。

 

それぞれがそれぞれの事情を抱え、人物が増えるごとに、

その事情も増えていく。

 

頭の中で、物語がとっちらかっていく。

 

人物の名前もすぐ忘れるし。

この人、誰だっけ。

 

始まりは、パラダイス・ガーデンという庭園で、

一人の女性の遺体が発見されたこと。

 

結末近くまで読んで、幸せな結末、とまではいかないまでも、

収まる所に収まったのかな、と思ったら…。

そうは、問屋が卸さなかった、やっぱり。

 

この作家さんの、「殺人鬼がもう一人」でも、

同じようなモヤモヤ感を味わされた。

持ち味だと思っても、なかなかスッキリさせてはくれない。

 

だが、そのスッキリできないのが、いつしかクセになって…。

 

この作家さんは、人の悪意を見事に描く。

この作品の場合、一人の人物の手によって、

悪意が操作され、影響を与えていく。

 

登場人物は誰も、お腹に一物、にもつ、三物も抱えているんじゃないかと、

邪推してしまう。

表があり、裏があり。それは、人間そのもので、

容赦ない筆致で描き切る。

 

欲であったり、妬みであったり、皮肉であったり、

誰しもが心の中に抱えているものを、そして、

人には見せたくないものを、最後には、

白日の下にさらけ出す。

 

ワタシにとって、とっ散らかっている中、北極星のように、

道しるべとなるのが、刑事の二村だった。

 

独特な雰囲気の彼女には、裏切られたくないなと思いながら、

彼女の後をついて行ったような気がする。

そして、この作品には、とんでもない悪人が、きちんと登場した。

 

「いい人」などいない。

やっぱり、いいことばかりでは終わらない、

ちゃんと、苦味を与えてくれる、そんな作品。