唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

「やらかし」て警官を辞め、探偵になった凪子。不仲の姉から、息子の転落死の真相を探ってくれと依頼されるのだが…。松嶋智左さんの「虚の聖域 梓凪子の調査報告書」を読む。

 

 

「調べつくすのが、私の流儀」と言い切る。

 

流儀をうんぬんするのは、もはや、ハードボイルドだ。

 

この作品は、主人公の梓凪子が探偵であるということばかりでなく、

皮肉たっぷりの言い回しや、乾いた文体、

前の作品、二作の警官小説とは趣を異にした、

完全なるハードボイルである。

 

女探偵のハードボイルドとなると、頭に浮かぶのが、

若竹七海さんが描くところの、「葉村晶」が頭に浮かぶ。

 

物事や人を、斜めから、裏から見、

冷えたところ、歪みがありそうな葉村が大人だとすると、

凪子は、多少、子どもじみたところがなくもない。

 

乾いた文体が小気味いい。

情緒たっぷりな文体も、それはそれでいいのだが、

粘っこさを感じて、重たくなるときがある。

 

主人公のキャラは、どこかギクシャクしている。

端から見ていると、何かにけつまずきそうで、

何となく、不安にかられる。

 

猪突猛進かと思えば、臆病風に吹かれることもある。

肝腎なことも口に出せない。

 

過去にやらかして、警官を辞めた女である。

この「やらかし」の中味は、ところどころで匂わされているが、

はっきりとは語られない。

 

その物語も気になる所ではあるが。

 

母親代わりに面倒を見てくれた姉、未央子。

彼女とは、ある時から不仲になってしまった。

その未央子の息子がデパートの屋上から転落して死亡する。

 

警察は自殺と断定するが、納得しない未央子から

凪子は死の真相を調べるよう依頼される。

 

「聖域」である学校に、凪子は乗り込むのだが…。

 

読者は、最後まで気を抜けない。

最後に、突き付けられる風景は…。

 

この後の、凪子の物語が待ち遠しい。