唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

待ってました!お帰り、新宿鮫…。大沢在昌さんの「暗約領域 新宿鮫XI」を読む。

 

暗約領域 新宿鮫XI

暗約領域 新宿鮫XI

  • 作者:大沢在昌
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/11/19
  • メディア: 単行本
 

 

 

ホントに、本当に、待ってました。

 

「新宿鮫」が帰って来てくれて、

嬉しいの一言だ。それ以外にない。

 

待ちわびていたのは事実だが、

桃井を失い、晶とは別れてしまい、

ボロボロになったであろう鮫島の変わりようを

見せられるのではと、恐れもしていた。

 

もちろん、ボロボロなのだろうが、

荒れてどん底に沈んだ鮫島を見ることはなかった。

 

彼が逃げ込むのは酒なんかじゃなく、

やはり、事件捜査なんだと、あらためて思う。

 

相変わらず、男くさい物語だ。

 

クールで情け容赦ない男たちの繋がりの中で、

それでも、少しは理解しあい、

情のやり取りが垣間見えるとき、胸が熱くなる。

 

香田、永昌、浜川、黒井、権現、藪…。

筋の通った男たちが、それぞれの筋を貫き通す。

 

だが、桃井の後釜として、女課長が登場したのには

驚いた。

 

これから、この課長、阿坂と鮫島との関係性に注目したい。

 

だが、だ。

 

鮫島を理解でき、鮫島の盾になれるのは、

桃井以外居ないだろう、居ないはずだと思いたい。

 

ワタシは、新宿鮫の新作が出ると、そのページを開く前に、

まず、第一作目を読み返す。

それは儀式のようなもの。

 

一作目の最後の一行を堪能してから、

新作を開きたいのだ。

桃井と鮫島の強い絆のはじまりを示す言葉で終わっているから。

 

桃井に事件の報告を済ませ、刑事部屋を出た鮫島に晶が問う。

「誰と話してたんだよ」

鮫島は晶に答えるのだ。

「新宿署で最高のお巡りと」、と。

 

この一言を毎回かみしめ、二人の関係、熱い思いに

触れながら、新作を読んできた。

 

だが、桃井は、もういない。

 

この儀式をする意味は、ない。

 

新宿鮫の第一章は、本当に終わってしまったという事実を

突き付けられる。

こんな寂しいことはない。

 

さて、今回も、中国人犯罪者、新宿ヤクザ、

北朝鮮の工作員、殺し屋、公安などなどが、

相変わらず絡まりあい、複雑な様相を呈している。

 

クスリに関するタレコミを基に、

ヤミ民泊を張り込む中、藪と鮫島は男の射殺体を発見する。

 

被害者の身元を探るうち、桃井を失った事件の

関係者や、組織が再び、姿を現す。

 

そしてもう一つ。

最後の最後まで、ひょっとしたらと、期待していた。

晶が現れるのではと。だが…。