取り戻すことのできない時間、だが、確かにあのとき、三人は輝いていた…。津原泰三さんの「ルピナス探偵団の当惑」「ルピナス探偵団の憂愁」を読む。
ぶっ飛んだ、刑事の姉を持つ主人公、吾魚彩子と、
男言葉を操る、親友の桐江泉、同じく親友で、
少々天然が入っているお嬢様、京野摩耶。
私立ルピナス学園高等部に通うこの三人と、
そして、彩子の憧れの君の祀島君が
さまざまな謎を解いていく学園ミステリー。
読み始めて、三人の少女の生き生きとしたやり取り、
少々、皮肉が加味されたユーモアたっぷりの会話に
まずは、やられてしまった。
それに、彩子の、がさつな姉、不二子の言動が、
普通ならイライラさせられそうなのだが、
登場人物の中で、最も生き生きとしているような気がするのは
なぜだろう。
ぶっ飛んだというか、とっちらかった性格が、
作り物の世界で、最も血が通った人間らしくうつるからか。
不可解なナソ、登場人物のキャラ、やり取りこみで、
この作家さんの作品には、独特の世界観がある。
ルピナス学園の三人のやり取りを読んでいると、
なぜだか、若竹七海さんが描くところの
「プラスマイナスゼロ」の三人の姿がダブって見える。
作品全体の雰囲気は異なるのだが、
こちらの三人、あちらの三人、役割、立ち位置が
とても似ていて、懐かしく、合わせて読み返してしまった。
だからか、ルピナス探偵団の中の祀島君の存在、
なくても良かったかな~と思うのだが。
名探偵として、現場に引っ張り出される彩子や
キリエ、そして時々、摩耶の推理で
物語が進んでいくのも、いいんじゃないかな、なんて
思ってもみたのだ。
そして、続編の「ルピナス探偵団の憂鬱」を続けて読んだのだが、
まず、第一話の展開に、呆気にとられた。
本当は、こちらの続編から先に紹介したい、
それほどの作品だったのだが、
やはり、第一作目を読んでからの方が、
続編の良さが、倍増するはずだ。
三人が過ごした日々を共に味わってからの
続編は、切ない…。
だが、尊い。