唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

取り戻すことのできない時間、だが、確かにあのとき、三人は輝いていた…。津原泰三さんの「ルピナス探偵団の当惑」「ルピナス探偵団の憂愁」を読む。

 

ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑

  • 作者:津原 泰水
  • 発売日: 2014/05/23
  • メディア: Kindle版
 

 

 

ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫)

ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫)

  • 作者:津原 泰水
  • 発売日: 2012/12/12
  • メディア: 文庫
 

 

 

ぶっ飛んだ、刑事の姉を持つ主人公、吾魚彩子と、

男言葉を操る、親友の桐江泉、同じく親友で、

少々天然が入っているお嬢様、京野摩耶。

 

私立ルピナス学園高等部に通うこの三人と、

そして、彩子の憧れの君の祀島君が

さまざまな謎を解いていく学園ミステリー。

 

読み始めて、三人の少女の生き生きとしたやり取り、

少々、皮肉が加味されたユーモアたっぷりの会話に

まずは、やられてしまった。

 

それに、彩子の、がさつな姉、不二子の言動が、

普通ならイライラさせられそうなのだが、

登場人物の中で、最も生き生きとしているような気がするのは

なぜだろう。

 

ぶっ飛んだというか、とっちらかった性格が、

作り物の世界で、最も血が通った人間らしくうつるからか。

 

不可解なナソ、登場人物のキャラ、やり取りこみで、

この作家さんの作品には、独特の世界観がある。

 

ルピナス学園の三人のやり取りを読んでいると、

なぜだか、若竹七海さんが描くところの

「プラスマイナスゼロ」の三人の姿がダブって見える。

 

作品全体の雰囲気は異なるのだが、

こちらの三人、あちらの三人、役割、立ち位置が

とても似ていて、懐かしく、合わせて読み返してしまった。

 

だからか、ルピナス探偵団の中の祀島君の存在、

なくても良かったかな~と思うのだが。

 

名探偵として、現場に引っ張り出される彩子や

キリエ、そして時々、摩耶の推理で

物語が進んでいくのも、いいんじゃないかな、なんて

思ってもみたのだ。

 

そして、続編の「ルピナス探偵団の憂鬱」を続けて読んだのだが、

まず、第一話の展開に、呆気にとられた。

 

本当は、こちらの続編から先に紹介したい、

それほどの作品だったのだが、

やはり、第一作目を読んでからの方が、

続編の良さが、倍増するはずだ。

 

三人が過ごした日々を共に味わってからの

続編は、切ない…。

だが、尊い。