原寮さんの「それまでの明日」を読む。
1988年、沢崎が初めて登場した「そして夜は甦る」からはや三十年。
その間、沢崎シリーズは、今作を含め六作。
なんと、前作から十四年たっているのだという。
読み始めたころは若かったワタシも…。
次を待つ間に、忘れてしまうんだヮ。
でも、ホント、作品の色は変わらない。
言うなれば、モノトーン。
モノクロ映画を見ているような雰囲気。
古き(決して、悪い意味ではなく)時代のハードボイルドの香りが
いい具合に漂う。
少々クサめの、探偵の言い回しも、懐かしいトーンだ。
喫煙できるところが少なくなった今に逆行するよう、
タバコの煙が充満する。
探偵の沢崎と、刑事である錦織、田島の関係も相変わらずで
おもしろい。
お互い、毛嫌いしているようで、妙に呼吸があう。
その様は、メンドーくさいオッサン三人が、
乳繰り合っているように見えなくもない。
でも、新宿って街、実にハードボイルドが似合う。
格好の舞台だ。
人の涙や汗や、血の匂いがプンプンしてきそうで。
人間臭いなぁ。
沢崎のもとを訪れたのは、今の時代、お目に掛かれないような
紳士然とした男性。金融会社の支店長だという。
彼からの依頼、「料亭<業平>の女将の身辺調査」を進めると、
当の女将はすでに亡くなっていることが判明する。
依頼人に報告するため金融会社を訪れた沢崎は、
強盗事件に巻き込まれる。
そして、依頼人は姿を消してしまうのだ。