若竹七海さんの「製造迷夢」を読む。
残留思念を読む、リーディングという超能力の持ち主、
井伏美潮と、渋谷猿楽署の刑事、一条風太のコンビが活躍する
五編の連作モノ。
「活躍する」と言っても、この作家さんの
作品『らしく』、結末を迎える時には、
後味に少々苦みが残る。
この苦み、読めば読むほど、
クセになるんだゎ。
火事から子どもを助けたために顔に火傷を負った一条。
それは、刑事としては勲章なのだが、
彼の心に陰りのようなものを残す。
後々わかってくるのだが、美潮も辛い過去を持ち、
その二人の醸し出す雰囲気が、妙に全体の陰となる。
超能力といっても、触れただけで何もかもお見通しというわけではなく、
それをきっかけに、一条が探り、推理し、真相に迫っていく。
そこで出会うものは、虐待、支配、人格分裂と、
どれも心の奥底に潜む悪意が形を変えて顔を表したもの。
中には、その悪意が取り払われずに、
別の場所でくすぶり続けるという、
「イヤミス」のような結末もあるが。
美潮は一条と出会って以来、事件に首を突っ込むのだが、
そのたびに美潮自身、深く傷つく。
じゃ、首を突っ込むなと、言いたくもなるが、
事件に巻き込まれた者たちのために、あえて、
関わっていく。
一条は、そんな美潮をうっとうしく思いながらも、
いつしか、守ろうとしている。
このコンビの行く末が気になる。
続編、出ないかなぁ。