「所轄魂」シリーズの第3弾。葛木が挑む立てこもり事件の犯人は、元SIT隊員!?要求は、警察を破滅させること。笹本稜平さんの「所轄魂 強襲」を読む。
父親は所轄刑事、息子は警察幹部。
このコンビが活躍する「所轄魂」シリーズの三作目。
江東区のアパートで、立てこもり事件が発生した。
元妻を人質にして立てこもっている犯人は、元SIT隊員だった。
膠着状態が続く中、犯人から城東警察署刑事、葛木の携帯に
電話が入る。「警察を自殺に追い込む」と。
犯人の真の狙いは…。
犯人から交渉役に指名された葛木は、
「誰も死なせない」という強い決意のもと、
犯人との交渉に挑む。
最初から最後まで、物語は事件現場だけで推移するため、
少々、抑揚に欠けた感じがあり、
状況、推理、さらに心情まで説明的で、
前へ、前へ、という感覚を持てなかったところが残念。
また、刑事部と警備・公安との確執が事件に及ぼす影響や、
事件の核にその確執が関わってくるという展開は、
うんざりするほど散らばっており、
警察上層部の隠蔽や政治家へのすり寄り、なんていうのも、
ゲップが出そうな題材で、それほど、ワクワクしなかったのも残念。