唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

榎本憲男さんの「巡査長 ブルーロータス」を読む。

 

ブルーロータス-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

ブルーロータス-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

 

 

 

異端の警察官、巡査長・真行寺の活躍が再びみられる。

 

この「巡査長」は全くと言っていいほど自由だ。

 

本庁の捜一に在籍しながら、たまたま出くわした

所轄の殺人事件に首を突っ込む。

 

その捜査で、北海道まで飛んで行ってしまう。

そこで知り合ったばかりの若者の部屋に泊まり込んでしまう。

 

いやいや、挙句、インドまで行ってしまうのだ。

 

実に「自由人」だ。

 

だが、この自由人、自由であるために、見えないところで

戦ってもいるのだ。

「なにかに抵抗しようとする暗い情念が

ずっとくすぶっているのだった」と自己分析もしている。

 

事件の真相を辿る旅は、殆ど、真行寺の心の声を辿る旅だ。

 

だからこそ、わかりやすい。

読者は、真行寺の自問自答と同じ足並みで、真相を目指すことができる。

 

警察小説で、事件の解明ありきなんだが、

今回は、個とか、人ってなぁにとか、自由とか、

(自由なんて代物は実在するもんじゃない、

それはただの概念だ。

自由だと思えば、そこに自由はあり、

自由じゃないと思うところに、自由はない)

ふと、立ち止まって、そんな目に見えないものを、

目で追ってしまっている。

 

インド文化、宗教、カースト制度、AI、

無人自動車、そういったものが、次から次へと提示され、

科学や哲学の世界が入り交じり、どんどん広がっていく。

 

悪党も、刑事でさえ哲学的で、

それは、論理的な事件解明を遅らせるが、

破綻はしない。

 

そして、ニコイチに従わない真行寺の唯一の相棒、

黒木との再会。

 

このコンビはとりあえず、いつまでも見ていたいので、

どうか、捕まることなく、末永く…。

 

さらに、大胆な結末。

う~ん、どう、考えたら、どう、想像したらいいんだろうか…。

 

 

真行寺は、荒川の河川敷でインド人男性の死体が発見されたという

事件に出くわす。

 

男性の耳には火傷の痕があり、熱い油を注がれてできたものと

判明する。

 

これは何を意味するのか。

 

事件を追ううち、彼は、インドの社会制度の闇と

深く関わっていくことに…。